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チューダー ハロッズ ブラックベイはもはやロンドン限定モデルではない

  • 2008/06/21 (土) 15:47

チューダーコレクターにとってエキサイティングなお知らせが飛び込んできた。ハロッズのチューダー ブラックベイ スペシャルエディションがロンドン限定ではなくなり、オンラインで購入できるようになったのだ。スーパーコピー 時計もともと2017年に発売されたRef.M79230G-001は、41mm径のスティール製ブラックベイに、ゴールドがあしらわれた文字盤と温かみのあるグリーンベゼルを備えたもので、イギリス・ロンドンにあるハロッズのフラッグシップストアでのみ購入可能だった。
ハロッズ ブラックベイは依然として高級小売店限定モデルだが、イギリスのみでの販売は終了したようだ。同モデルは市場での入手が限られていたため、チュードライト(チューダーファン)のあいだではコレクターズアイテムとなっていたが、現在はハロッズの公式ECサイトにて3440ポンド(日本円で約63万6000円)で販売されている。

文字盤には、防水性表示に使用されているグリーンのカラーリングを含め、ストレートな文字が配されている。ハロッズ ブラックベイは、チューダー自社製のノンデイトCOSC認定ムーブメント、Cal.MT-5602を載せ、約70時間のパワーリザーブを確保している。またグリーンのカラーリングに加えて、ハロッズスペシャルエディションには特別なエングレービングが裏蓋に施されている。

このモデルの中古価格が5000ドルから6000ドル(日本円で約75万7000~90万9000円)で推移していると考えると、ハロッズから直接購入できるようになる動きは、グリーンベゼルチューダーを候補に入れていた(あるいは単にウェイティングリストに名前を入れていた)人にとっては、前向きな展開のように思える。

最後に、ハロッズ ブラックベイの在庫状況が変更されたことで、同モデルが製造中止になるかもしれない(あるいはすでに生産終了になっている)という新たなうわさも浮上した。この件についてチューダーにコメントを求めているが、いずれにせよ確証は得られないだろう。とはいえ、2023年に41mm径のブラックベイが変わったことを考慮すると、2017年仕様が段階的に廃止されたとしても不思議ではない。

製造中止になろうとなかろうと、ハロッズ ブラックベイのフォーマットが非常にクールな表現であることに変わりはないし、もうロンドンまで行く必要もないのだ。

ヴィンテージロレックスからG-SHOCKまで、幅広いヤンのコレクション。

  • 2008/06/20 (金) 19:09

私がジミー・O・ヤンのことを知ったのは、ドラマ“シリコンバレー”で彼が演じた、時に威嚇的で常にシーンを賑わす無表情なキャラクター、チアン・ヤン役がきっかけだった(このHBOのコメディドラマは必見だ)。その後、香港出身のこの俳優にしてコメディアン、作家は、映画(『クレイジー・リッチ!』)、Amazonのスタンダップスペシャル(『人生はお買い得』)、スティーブ・カレルとジョン・マルコヴィッチ共演のシットコム(『スペース・フォース』)、そして最近ではホリデーシーズンのロマンスコメディ映画『ラブ・ハード』で主演を務めた。

Jimmy's Collection of Watches
 ジミー・O・ヤンは根っからの時計好きで、それは彼のコレクションからも一目瞭然だ。赤と青のベゼルが特徴的なGMTマスター “ペプシ”は、スタンダップパフォーマンス中に身につけるお気に入りの時計だそうで、『ラブ・ハード』ではマッチングアプリを駆使しながらなりすましをして相手を探すキャラクター、ジョシュ・リン用に、スーパーコピー時計 代引き自ら選んだG-SHOCKを愛用している。

Jimmy O. Yang
Photo by FilmMagic/FilmMagic

 しかし、多くの時計コレクターが確固たる事実やリファレンスナンバーを蓄積することを趣味としているのに対して、ヤンはそのすべてを大らかに捉えているようだ。彼は時計を楽しんでいる。2本のヴィンテージロレックス(もう1本はティファニーのWネームの入ったデイトジャスト)であろうと、スタンダップパフォーマンスでテレビ初出演時に百貨店で買ったパネライ風のマーク・ジェイコブスであろうと、彼は自分の好みに忠実なのだ。確かに、最近手に入れたもののなかには、以前のものよりも値が張るものもあるが、このコレクションから気取っている感じはしない。

GMT-Master
Young Jimmy O. Yang
Photo: courtesy Jimmy O. Yang

 ヤンのコレクションは真摯で、多くの読者が共感するだろう。私もそう感じた。ただひとつ違うのは、我々の多くが初めて手にした時計を手放してしまっているのに対し、ヤンは香港で過ごした幼少期に観たアニメ『ドラゴンボールZ』のグッズなど、大切に保管していることだ。時計談義と笑い話にあふれたジミー・O・ヤンとのTalking Wathesをお届けしよう。

ドラゴンボールZウォッチ
Dragon Ball Z
 ヤンの幼少期のドラゴンボールZウォッチ。ここからすべてが始まる。思い出のトランクからアニメにインスパイアされた腕時計を見つけたあと、アルコールティッシュで少しきれいにしようとしたところ、思わずストラップの表面が剥離してしまったという。ドラゴンボールZはヤンが幼少期に大好きだったアニメのひとつだ。彼はその腕時計を修理して、再び身につけるつもりだ。

マーク・ジェイコブスウォッチ
Marc Jacobs
 ヤンが大人になって初めて買った時計である。アーセニオ・ホールの番組で初めてテレビ出演することになったヤンは、新しい服を買いにノードストローム(米百貨店)へ向かった。派手なデザイナーズジーンズを選んだあと、店の宝石・香水コーナーにあった手ごろな値段の、パネライ風マーク・ジェイコブスウォッチが目に留まった。彼はその外観にひと目惚れし、その場で200ドルを支払った。番組出演から間もなくして電池が切れ、電池を交換しても時計は動かなかった。ヤンはレシートを手に再びノードストロームへ行き、新品と交換したそうだ。

ロレックス GMTマスター Ref.1675 “ペプシ”
GMT-Master
 この時計に見覚えがある読者は、Amazonの特番『人生はお買い得』でヤンの腕に光っていたのを覚えているかもしれない。ヤンのGMTマスター Ref.1675は彼のお気に入りの時計であり、本格的なヴィンテージコレクションの世界に足を踏み入れたきっかけの時計でもある。映画『クレイジー・リッチ!』の原作者であるケビン・クワンと親交を結ぶまでは、時計にはあまり興味がなかったとヤンは告白した。ヤンは、現行モデルのGMTマスターIIに比べて、ヴィンテージGMTマスターのバルキー(※大きくてかさばること)でないサイズ感が気に入っている。カラフルなベゼルインサートも遊び心にあふれ、シリアス過ぎない。この時計は、彼の腕に着用されているのを見た人たちから最も大きな反応を得る時計だ。

コンビのロレックス デイトジャスト ティファニーダイヤル
Datejust
 ヤンが次に手に入れたのは、ジュビリーブレスレットとティファニーダイヤルのコンビのデイトジャストである。ロサンゼルスのヴィンテージウォッチ専門店“Wanna Buy A Watch?”で試着したところ、ブレスレットのサイズを変更することなく、完璧にフィットしたという。DJはGMTマスターほど頻繁には着用しないが、ヤンはベージュの服に合わせたときのクリーンな印象が気に入っているという。もちろん、ダイヤルのティファニーの刻印が、このデイトジャストを際立たせている。

カシオ G-SHOCK GA900-1A3
G-Shock
 ヤンは、Netflixのロマンス・コメディ『ラブ・ハード』でジョシュ・リンを演じるために、このアナデジG-SHOCKを選んだ。ヤンが香港で育った子どもの頃、本物のG-SHOCKが欲しいと思っていたのだが、ある夜彼はひらめいた。ヤン演じるジョシュがG-SHOCKをつけていたら最高じゃないか? と、小道具係と衣装デザイナーにメールを送ると、彼らはそのアイデアに大賛成してくれたという。ヤンは、この時計のすべての機能の使い方は知らないし、タイマーはここ2年くらい動いていたかもしれないと認めている。

パテック フィリップは一般的に、無口とまでは言わないが、家族経営の高級時計製造ブランド

  • 2008/06/19 (木) 05:34

しかし、ここ数年は定期的にワークショップ(教育セミナー)を開催し、パテック フィリップの腕時計や歴史を中心としたものではあるが、時計製造に役立つ、有益で一般的な情報を数多く提供している。私が最後に参加したのは、静的、そして動的なスタイルによる1日がかりのワークショップだった(私と同じような思考の持ち主なら、これはかなりエキサイティングで手に汗握る白熱したものだとわかるはずだ)。直近ではミニッツリピーターに関するワークショップが開催された。このワークショップではゴングの製造からケース構造、リピーターがどのようにテストされてからパテックでリリースされるか、あらゆる確認・検証が行われた。そう、馬の尿についても(これについては後述)。そして、そこから物語が始まった。

Patek 5074P, Selfwinding Minute Repeater With Perpetual Calendar
自動巻きのパテック 5074P ミニッツリピーターパーペチュアルカレンダー。

パテック フィリップスーパーコピー時計 代引きチャイムウォッチの歴史の大まかな概要は、一般的によく知られている。音で時刻を知らせるのは、少なくともヨーロッパの機械式時計において最も古くから知られている方法であり、脱進機を搭載した機械式時計の初期のものは、針も文字盤もなく、鐘を鳴らすことで時刻を知らせていたと考えられている。腕時計や時計は“インパッシング”、つまり毎正時と15分毎に自動的に時を告げるか(鳩時計など)、“オンデマンド”、つまり所有者がボタンやスライドを操作することでムーブメントが作動し、その瞬間に時刻を告げるものにわけられる。

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 “リピーター”という言葉はオンデマンドストライキングのほうを意味する。最初のリピーターはイギリスで生まれ、リピーターウォッチの最初の特許は1687年にダニエル・クオール(Daniel Quare)が取得した。最初のリピーターウォッチは時、それに最も近い15分(4分の1の時間)を告げるもので、そこから徐々に精密なチャイムウォッチが開発され、ついには分刻みで知らせるミニッツリピーターが登場した。我々が知る限り、最初のものは1720年頃にドイツでつくられている。

Patek Philippe Reference 5216P, minute repeater with tourbillon, retrograde date, and moonphase.
パテック フィリップ Ref.5216P。トゥールビヨン付きミニッツリピーターレトログラードデイトムーンフェイズ。

リピーター機構がウォッチメイキングの科学的な部分であることに異論はない。そのため、設計にはより多くの理論が必要であり、製造には繊細さと正確さが求められる。だからこそこの仕事を知り、それを実践している人たちは、ほかの仕事より完璧にこなせるのだ。

– フランソワ・クレスプ(François Crespe)、『ESSAY ON REPEATER WATCHES, 1804』(翻訳:リチャード・ワトキンス)
caliber R TO 27 PS QR, Patek reference 5216P
キャリバーR TO 27 PS QR(パーペチュアルカレンダー)ムーブメント。

 パテック フィリップのミニッツリピーター製造は、はるか昔にさかのぼる。パテックのアーカイブに記録されている最初のものは1839年に誕生しており、450スイスフランで販売された(これは当時、同社が製造したなかで19番目の時計だった)。この時計はクォーターリピーターであった。最初のハーフクォーターリピーター(時、4分の1時間、そして最も近い5分の1時間、つまり7分30秒の時間をチャイムで鳴らす)は1845年に販売され、同年にはブランド初となる本格的なトゥルーミニッツリピーターも登場している。最初のパテック グラン・プチ・ソヌリが販売されたのも1845年のことである(この年はジャン・アドリアン・フィリップが入社した節目の年でもある)。それ以来、パテックは世界で最も有名なチャイム付き複雑時計を製造してきた。それらには、1910年製作のレグラ公のポケットウォッチ(ミニッツリピーターとウェストミンスター・チャイムを備え、5つのゴングでチャイムを鳴らすグラン・プチ・ソヌリ)、記録破りのヘンリー・グレーブスのスーパーコンプリケーション(2014年に2400万ドル、当時の相場で約25億4000万円にて落札されたのを目撃しており、読者のみんなと共有した)、Cal.89、スターキャリバー2000、そして最近だとグランドマスターチャイムなどが含まれている。

The Henry Graves Supercomplication, shortly before it hammered at Sotheby's for $24 milliion in 2004.
2014年のサザビーズにて、2400万ドル(当時の相場で約25億4000万円)で落札される直前の、ヘンリー・グレーブス スーパーコンプリケーション。

 同社最初の腕時計用リピーターは、1916年にレディースウォッチとして製造されたファイブミニッツリピーター(時、4分の1時間、次に5分間隔の最も近い数字をチャイムで知らせる)であり、27.1mmのプラチナケースに収められていた。1925年に販売されたパテック初の腕時計用ミニッツリピーターは、第2次世界大戦前後に、頻繁にサプライヤーを務めたヴィクトラン・ピゲ(Victorin Piguet)の12リーニュサイズの型を使用していた。これは盲目だったアメリカ人自動車技術者、ラルフ・ティーター(Ralph Teetor)のために作られた、ティーターウォッチとして有名である(彼の発明品には、最初のクルーズコントロールが挙げられる)。1960年代と70年代のリピーター生産は、事実上停止状態にあったが、1980年代にはリファレンス3621と3615というふたつのユニークピースを製造。そして1989年、パテックはマイクロローター駆動の、パーペチュアルカレンダー、ムーンフェイズ、ミニッツリピーターを備えたCal.R 27 Qを搭載したRef.3974を発表する。

Patek ref. 3974
パテック Ref.3974は、2016年5月のフィリップスにて、118万1000スイスフラン(当時の相場で約1億3200万円)で落札された。

 しかし、パテック フィリップがリピーターの通常生産(限定ではない)を再開したのは、1992年になってからだった。その年に発表されたRef.3939は、1992年から2010年にかけて製造され、現在もサラブレッドのハイコンプリケーションを最も控えめに着用できる時計として残っている(編集注記:2023年現在は生産終了)。2011年にベン(・クライマー)は、Only Watch(2011年)のために作られた1本だけのスティールバージョンについて紹介している。“Ref.3939はしばらくのあいだパテックのカタログに存在していたが、ゴールドとプラチナでしか入手できなかった。小ぶりなケースのなかにトゥールビヨンが隠され、文字盤はエナメル、さらに比較的目立たないリピータースライドを備えたこの時計は、究極のサイレントキラーである。普通の人には大したものに見えないかもしれないが、それは特別なものなのだ”。なおこの3939は190万ドル(当時の相場で約1億5100万円)で落札されている。

patek philippe 3939
Ref.3939 リピーターは、ハイコンプリケーションのなかで最も控えめ超高級モデルかもしれない。

パテック フィリップのミニッツリピーター製造の現状
 パテック フィリップは現在コレクションのミニッツリピーター製造において、とてもおもしろい道を選んだ。リピータービジネスを展開している多くのメーカーは(まあ今回はエキゾチックなリピーターの話をしているため、それほど多くはないのだが)、熱心に研究開発に取り組んで技術的な優位性と進歩を重視するなか、パテックは、より現代的なアプローチを示す補助的な試験技術を採用しているとはいえ、ほとんどの場合、昔ながらの方法で物事を進めている。例えば、各リピーターのサウンドプロファイルの録音は無響室で行われ、そのサウンドはパテックの社内基準を満たしていることを確認するためにデジタルで分析される。しかし、パテック フィリップのリピーターには、1世紀前の時計職人にとって衝撃的と思われるようなものは何もない(実際、パテックの時計の多くにシリコン製ヒゲゼンマイが含まれているが、今日までリピーターでは見られない)。技術的に先進的な、今日の最高のリピーターに対する興味は間違いなくあるが、パテックに見られる伝統的な手法の継承を象徴するリピーターの扱い方には、なにか深い説得力がある(パテック フィリップの本領発揮と言えるだろう)。

冷静沈着という言葉は誰もが耳にしたことがあり、それは多くの機会に適用できるが、リピーターの修理を請け負う人にとっては真に個人的な意味を持っている

– ドナルド・デ・カール(Donald de Carle)、『Complicated Watches And Their Repair』
Patek Philippe Reference 5078R
38mmのパテック フィリップ Ref.5078R、自動巻きリピーター。文字盤はエナメル製。

Patek caliber R 27 PS
ひっくり返すと、Cal.R 27 PSとある。

 簡単に説明すると、ミニッツリピーターの作業は、ほかの時計の作業とは異なる厳しさが要求されることを覚えておくといい。唯一近いのはラトラパンテクロノグラフかもしれない。クロノグラフは、メンテナンスと製造の両方に細心の注意を払う必要があるが、リピーターに要求されるような、いい音質という主観的な判断は必要としない。時計学作家のドナルド・デ・カール(控えめに言っても、大げさな表現を好む作家ではなかった)は、『Complicated Watches And Their Repair』のなかで次のように書いている。「複雑時計を修理するときには細心の注意を払わなければならないと、常に強調されてきたが、繰り返し時計を修理するときには、このアドバイスが二重に強調されることになる。冷静沈着という言葉は誰もが耳にしたことがあり、それは多くの機会に適用できるが、リピーターの修理を請け負う人にとっては真に個人的な意味を持っている。それはこれから説明する仕事をこなすのに必要なメンタリティーを、学生が練習をとおして身につけることで、自分自身が熟練するのである」

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 リピーターの主な特徴は、チャイムが鳴るテンポ、音質、音量の3つだ。パテックのリピーターのテンポは、天板のカラトラバ十字の下にある遠心調速機(ガバナー)によって制御される(シースルーバックから見えるムーブメントの部分だ)。リピーターに動力を与える別個のゼンマイ香箱と調速機本体をつなぐ直列のギアが3つあり、その先端に、重りのついた2本のスプリングアームが付いている。ホームボタンを押してリピータースライドを離すとゼンマイが巻き取られ、その巻き上げ速度、つまりチャイムが鳴る速さと遅さは、調速機の回転速度によって決まる。調速機は慣性抵抗を提供することによって、ゼンマイ香箱の回転速度を落とす。ゼンマイが回転すると2本のアームがゼンマイの抵抗に対して外側に開き、(使い古された言い回しだが)回転するフィギュアスケート選手が腕を伸ばすかのように回転速度が遅くなるのだ。

Patek repeater movement showing centrifugal governor, and tourbillon
遠心調速機は12時位置にある。S字型スポークを持つ大きな歯車は、トゥールビヨンを駆動する第3の歯車だ。

 パテックは1989年に遠心調速機を使用し始め、現在ではすべてのパテック製リピーターへ採用している。チャイムのテンポをコントロールする古い方法は、独特のうなるような音を発するアンカーを使用している。完全に無音というわけではないが、遠心調速機は常時静かだ。リピーターの調整ポイントのひとつは、調速機の回転速度にある。理想では、最後の数分が打たれている最中チャイムのテンポが著しく遅くならないよう、主ゼンマイ香箱に十分なパワーリザーブがあることだ。

Patek Philippe reference 5074P, perpetual calendar with minute repeater.
パテック フィリップ Ref.5074P、ミニッツリピーターと24時間表示を備えたパーペチュアルカレンダー。

Patek Philippe caliber R 27 Q.
パテック フィリップ Cal.R 27 Q。

 現代のミニッツリピーターのゴングは、一般的に硬化スティールで作られている。パテックウォッチのなかには、従来のゴングより1.5倍の長さを持つ、いわゆるカテドラルゴングと呼ばれるものを搭載していることがある(これまでの経験に基づくと、より深みのある豊かなサウンドを特徴としている)。現代の製造方法は比較的予測可能であるにもかかわらず、リピーターづくりはいまだ暗中模索の様相を呈しており、各リピーターの音響品質はケース、ムーブメント、ダイヤルの特性、さらにはリピーターに石がセットされているかどうかによっても異なる可能性がある。そのため、パテックは21種類のグレードからなるスタンダードゴングと、同じく21種類のグレードのカテドラルリピーターゴングを製造している。それらのゴングはひとつずつ手作業されるため、作り方を覚えるにはかなりの時間がかかる。ただパテックの時計職人たちは、特定のグレードのゴングを100個ほどつくり、そのグレードを十分にマスターしないとならないと言われており、マスターできなければ実際生産されるミニッツリピーター用のそのグレードをつくることが許されないと言われている。なおゴングの直径は、わずか0.48mmから0.6mmしかない。

 神話と伝説について少し話そう。まず第1に、我々はパテック フィリップから直接聞いた話なのだが、パテック フィリップのミニッツリピーターが世に送り出される前、ティエリー・スターン自らが耳を傾け、承認し、世界に公開しているという。検証プロセスには基本的な段階が4つある。まずリピーターは、それを作った時計職人によって承認を得ること。第2に、無響室に行き(反響を抑制する材料が敷き詰められた部屋。そうでなければ十分にクリーンな録音にならない)、必要なパラメータのための計算分析を受ける記録を行う。第3に、パテックの上級時計師がリピーターの音を聞き、チャイムのコンプリケーションを担当する。そして最後に、リピーターがティエリー・スターンのもとに送られる。リピーターがスターンのオフィスに到着するまでに承認される可能性は高いが、ごくまれに不合格になることもあるという。パテックによると、頻繁ではないが単なる形式的なものでもないとのことだ。パテックのリピーターの平均的な音は約60dBで、チャイムはほぼ正確に18秒間鳴らなければならないなど、一定の基本的な目標パラメータはあるが、リピーターの審査の大部分はいまだに人間の耳による主観的なものなのだ。

モナコ・レジェンド・グループのエクスクルーシブタイムピースセールだ。

  • 2008/06/18 (水) 13:02

秋のオークションシーズンとしては最大級のものになるかもしれないし、少なくともコレクター活動にとっては最大級の風見鶏になるかもしれない。この秋、ふたりの大物コレクターが、デュフォーのソヌリ、数本のジョージ・ダニエルズの腕時計、大スター御用達の腕時計などをオークションに出品する。つまり、1回のオークションでヘッドラインを飾るのに十分だったであろう時計たちが、今ではひとつかふたつのオークションだけで注目の的となっている。パテックの1518、ポール・ニューマン・デイトナ、F.P.ジュルヌなどはモナコにもあるし、大手のオークションハウスとしては普通のことだが、この秋においてはそれらですら控えめになりつつある。

カルティエスーパーコピー代引き ロンドン オクタゴン。

同メゾンの一流コレクターのひとりであるジョン・ゴールドバーガー氏が披露したる¥、カルティエ ロンドンのユニークなデザインの完璧な例。

本オークションに出品された、2本のエベラール社製スプリットセコンドクロノグラフのうちの1本。こちらはエベラール社製ムーブメント、Cal.16000を搭載している。

トニー・トライナは、これらのセールが何を意味するのかを理解するために、この記事で素晴らしい仕事をしてくれた。しかし、クリスティーズが一方向へ進んだのなら、ダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmigiani)氏と彼のチームはまた別の方向へとシフトし、11月の熱狂を避けてヴィンテージ愛好家のためのオークションを作ることに全力を尽くした。281ロットもあるので、この記事を長く感じられるかもしれないが短くすると必ず約束しよう。しかし、カルティエのロンドン オクタゴンやエベラール スプリットセコンドクロノグラフに興奮しているような人にとっては、モナコがあなたの舞台となる。カバーロットだけでもその証拠だ。

パールを乗せたリューズは、カルティエ カレンダーの素晴らしいディテールのひとつに過ぎない。

1964年製のカルティエ マグナム タンク(エスティメート20万ユーロ~40万ユーロ、日本円で約3200万~6400万円)は、今まで見たカルティエの腕時計のなかで最も希少な部類に入るが、それでも記録的なロンドン クラッシュよりは、はるかに安くなることは間違いない(編集注記:結果は41万6000ユーロ、日本円で約6655万円で落札)。カルティエが販売している“非常に希少な”オーデマ ピゲのカレンダーとは異なり、こちらはさらに希少なAPムーブメントを搭載したカルティエ フランス製の時計だ。これらのタンク ダイヤルもそれぞれユニークな構成で作られていた。一方ロット108、オーバーサイズのパテック Ref.530(スティール製、ブラックダイヤル、ゴールドのブレゲ数字)は、ジョン・ゴールドバーガー氏のコレクションからの出品だ。これは間違いなくカラトラバの最もまれで重要なリファレンスであるが、2017年にベン(・クライマー)が指摘したように、学術的に認知されるようになったのはこの15~20年のことである。同様の時計がオークションにかけられた過去の例はさまざまある。2016年から2017年のあいだに41万5500スイスフランから144万5000スイスフラン(当時の相場で約4585万~1億6465万円)であったが、ここでのエスティメートは25万ユーロ~50万ユーロ(日本円で約4000万~8000万円)である(編集注記:結果は80万6000ユーロ、日本円で約1億2890万円で落札)。

最後に、同じエスティメート範囲で、アール・デコ時代のパテックで私のお気に入りの一例を紹介しよう。ロット208は、“おそらくユニークな”スクエアプラチナケースに、センターセコンド、ブレゲ数字が入った時計だ。長い“Patek, Philippe & Co.,のシグネチャー、ヒンジ付きのケース、ブラックエナメルで縁取られた装飾が施されている。パルメジャーニ氏は35年間、この時計を追い続けた。ほかにもいくつかの例が知られているが、プラチナケースの例はない。さらにこの時計にはオリジナルボックスが付いている。ケースの隅に施された装飾を見れば、パテックが5950からインスピレーションをどう得たのか、すぐに理解できるだろう。いずれも、すぐにわかるアイコンでもなければ、記録を破る可能性のあるものではないが、ヴィンテージ愛好家にとっては死ぬほど見たい時計である。

アイコンに関して言えば、最近ではポール・ニューマン・デイトナ(もしくは最低5本)なしにはオークションは語れないようだ。しかし、もしあなたが上位0.1%のコレクターなら、今は“平均的なポール・ニューマン”以上のものを求めているはずだ。幸運なことに、これは私が覚えているなかで最もおもしろいグループ分けのひとつだ。

オークションの最終ロット281は、非常に魅力的なポール・ニューマン・デイトナ、トロピカルブラウンのRef.6263、オイスター・ソットダイヤルである。写真では素晴らしかったのだが、実際に見てみると、コーヒーブラウンの文字盤に対して、インダイヤルの黒がいかに目立っているかに衝撃を受けた。文字盤中央のトーンは“ソフト”であるにもかかわらず、ほかのポール・ニューマンよりもかなり大胆になっている。また、MLG(モナコ・レジェンド・グループ)はティファニーのサインが入った時計10本をとても魅力的なテーマでまとめており、そのうちの2本(ロット27とロット150)がポール・ニューマンという大胆なものだ。

それから“ミステリークロス”パンダのポール・ニューマンRef.6265だ。これは若き日のテンジン・ノルゲイ(Tenzing Norgay)が同行したスイス人によるエベレスト登頂の挑戦失敗から20年を記念して、スイス山岳研究財団のためにエングレービングされたものであると判明するまで、長いあいだコレクターを悩ませてきた個体だ。この例はその物語を裏付ける来歴があり、現在では謎が少なくなっているものの名称は定着している。また、ポール・ニューマン以外の特典として、ブルーダマスクダイヤルという珍しいプロトタイプもある。これにはRef.116520、箱、書類、ブヘラの確認書が付いていて、デイトナのオークションとしては悪くない。

私はさらに、人目につかないものを探しに行った。これらのなかにはまだまだとてつもなく高価なものもあるが、市場の好みに合わない腕時計や、しばらくのあいだ人気があったがピークを過ぎてしまった(あるいは、まったく期待できなかったのかもしれない)時計を探すのが好きなのだ。

モナコ・レジェンド・グループは非常に珍しいデイデイトをまとめたが、私はそのテーマの外に目を向けていた。例えば、ロレックスのバブルバックが“真の研究者”のために収集される時計であった頃、確かにその場の周りには誰もいなかったことを知っている。より大振りなSS製ロレックスが台頭し、王者として君臨し続けるなか、私はバブルバックやその時代の類似ロレックス、さらには奇妙な形のロレックスのほうが魅力的な提案であると気づいた。

この時計について、何か変わったところはあるだろうか?

これはクロノグラフではなく秒表示がふたつあり、2本の針の進行は完全に一致する。

たとえ手が届かなくとも、ロレックス バブルバックのロット47に注目をしている。これはセンターとサブの両方に秒表示があり、通常はエナメル製バブルバックにしか付けられない価格に達する可能性がある(編集注記:結果は12万3500 ユーロ、日本円で約1975万円で落札)。このリファレンスはふたつのバージョンしか確認されておらず(もうひとつはプライベートコレクション)、こちらはほぼ完全なコンディションで、ふたつのなかでは圧倒的に優れている。なぜこのような奇妙なデザインが作られたのかは誰にもわからないが、魅力的なピンクゴールドインデックスと幻想的なケースにより、間違いなく同オークションのなかで最も素晴らしいロットのひとつである。

一方ロット125と241は、デイトナ登場以前の角型、ステップケース式クロノグラフで、非常に興味深くて魅力的なモデルである。実際、スクエアケースのクロノグラフは、ダヴィデ・パルメジャーニ氏が35年間のうち唯一見かけたピンクゴールド、黒文字盤バージョンであり、その状態はかなり驚くべきものである。ステップ状のラグのリファレンスは、ジョン・ゴールドバーガー氏が初めて所有した時計とほぼ同じだが、彼の時計はダブルサインではなかった。このセルピコ・イ・ライノ(Serpico Y Laino)バブルバックや、ロレックス ゼファー(写真ではケースのコンディションが正当に評価されていない)、そしてRef.9004 プレシジョンはもっと手頃な見積もりであり、スマートなコレクションの入門としては最適だろう。またパテック フィリップのアイコン的存在であるRef.2425と共通のSogno S.A.(ジュネーブ)社製ケースを持つ、Ref.4371 “スケーター”もある。まさに知る人ぞ知る名機である。ただ正直なところ、1943年製でティアドロップ型のラグとオーデマ ピゲのフォントを備えた、37mmというオーバーサイズの金無垢モデル、ロット247のほうに傾倒している。

ロンジンの価格もピークを大幅に過ぎているが、それでも腕時計は依然として素晴らしい。実際、ヴィンテージクロノグラフを収集したいのであれば、13ZNは必須であると私は今も変わらず主張する。写真の超魅力的な金無垢ロンジンは、13ZN ドッピア・ランチェッタ(Doppia Lancetta、英語では“ダブルハンド”)である。これは中央に計測用の分針を備えた、市場に出回っているなかでもクールな13ZNの個体であり、よりモダンで着用しやすい39mmサイズとなっている。傾斜したラグという珍しいSS製36mm 13ZNや、大型な42mmのレジェンドダイバーコンプレッサーなど、かつて高価だったヴィンテージロンジンのほかの目玉モデルもチェックしてみて欲しい。

それから変わり種もいる。バブルバックの全盛期にいなかったのと同じように、大きくて大胆なネオヴィンテージコンプリケーションが世間を支配していた時代の時計に、私は興味がなかった。プラチナ製のパルミジャーニ・フルリエ トリック ミニッツリピーター(リピーターの音を出すには最も不向きな金属のひとつだが)、GMT付きは、2000年代初頭のデザインを象徴しているが、優れた時計製造をも備えていた。また、このような実用的なコンプリケーション(GMT)とミニッツリピーターが組み合わされたモデルを目にする機会は少ないだろう。このロジェ・デュブイについても同様のことが言える。デザインに関してはともかく、少なくともバイレトログラードパーペチュアルカレンダーという、技術的に非常に魅力的なものを搭載している。

ブレモンは今週、新しいカラーリングおよびGMT機能を備えた、次世代のスーパーマリン S302を発表した。

  • 2008/06/18 (水) 10:30

長年のスーパーマリンシリーズをやや小型化したトラベルバージョンとして製造され、グレーの限定モデルを含む3種類のバージョンで用意された。

bremont S302
私は第1世代のS302を所有しておりそれをとても楽しんでいるが、新しい世代に移行しても、プロポーションと構造はほとんど変わっていないようだ。スリーピース構造のケースは直径40mm、厚さ13mm、ラグからラグまで49mmのままである。

変更されたのは、新しいS302が複数のタイムゾーンを管理する方法が追加されたことだ。オリジナルモデルは、ダイバーズウォッチシリーズのS300をベースに、GMT機能を追加したダイブGMTというフォーマットだった。つまり、見返しリングに経過時間ベゼルと24時間スケールを得ていたことになる。第2世代のS302ではそれが逆になり、3モデルとも逆回転防止機能が付いた24時間ベゼルと60分スケールを備えていた。

bremont S302
小さな違いのように見えるかもしれないが、スーパーコピー時計 優良サイトスーパーマリンがダイバーズウォッチのラインナップであると考えると、重要視せざるを得ない。というのも新型S302は300mの防水性とねじ込み式リューズを備えているが、もはやダイビングに特化した腕時計ではない。その代わりに24時間ベゼルを備えたことで、新型S302は最大3つのタイムゾーン(ローカルタイム、UTC、およびUTCからのオフセットを介したベゼル上の第3タイムゾーン)を追跡できるようになった。

オリジナル(これは現在も入手可能である)のS302で確立されたように、新世代はETA2893をブレモンが改良したものを使用しており、これはコーラーGMT機能(別名、独立して調整できる24時間針)を備えた、2万8800振動/時で時を刻む自動巻きムーブメントである。つまり、24時間針を個別に調整して希望の時間帯を表示したり、前述のようにGMT針をUCT時間のままにしてベゼルを回すだけで、任意のタイムゾーンを追跡することもできる。

bremont S302
新作はブルー/グリーンのベゼルを持つブルーダイヤル仕様、DLCブラックケースとマットブラックダイヤルを持つS302 ジェット、海洋生物学者でフリーダイバーのオーシャン・ラムジー(Ocean Ramsey)氏とのコラボレーションによる400本限定モデルのグレートーンS302 スーパーマリンオーシャンの、3バージョンをリリース。また限定モデルの売り上げの一部は、“セーブ・ザ・タートルズ・インターナショナル(Save The Turtles International)”のチャリティーに寄付される。

ブルー/グリーンとオーシャンLEモデルはラバーストラップ、レザーストラップ、スティールブレスレットから選択でき、S302 ジェットのみラバーまたはレザーのどちらかのストラップオプションで提供される。価格はブルー/グリーンが3750ドルから4200ドル(日本円で約56万2000円~62万9000円)、ジェットが4250ドル(日本円で約63万7000円)、オーシャンLEが4000ドルから4450ドル(日本円で約59万9000円~66万7000円)だ。

bremont S302
S302 スーパーマリン ブラックDLC ラバーストラップ。

我々の考え
ずっと初代S302のファンである僕は、新しいカラー、特にオーシャンLEのオールグレーとジェットのオレンジGMT針の見え方が大好きだ。それと同時に、僕はダイバーズGMTのレイアウトがとても好きで、これからも好きであり続けるだろう。僕はダイバーであり、腕時計をダイビングに持っていくのが好きなのだが、オリジナルのS302のお気に入りの要素のひとつは、そのダイビングGMTフォーマットだった。

bremont S302
とはいえ、ダイビングよりも旅行をする人の方がはるかに多く、この新世代はより広く応用できる商用製品として理にかなっていると思う。些細なことかもしれないが、この新しいモデルはダイビング中に(ダイブ)コンピュータの簡単なバックアップとして使用できることもある。しかし、この記事の見出しを見ただろう。細かいことを言ったり、粗探ししたりすることは、僕の生計の糧のようなものだ。

ダイバーズGMTとGMTダイバーズという対立する派閥はさておき、S302のサイズとディテールを掘り下げたいのであれば、僕のオリジナルストーリーを確認することをおすすめする。僕は1本買うほどに気に入っている。40mm径のサイジングは素晴らしく、ベゼルは愛らしく、S302はブランドで最も完成度の高い時計だと思っている。

S302 スーパーマリン ブルー&グリーン ラバーストラップ。

シリーズ初のジェットという非常にハンサムなリミテッドエディションを含む3色の新色により、S302の進化はブランドにとってうまく機能していると感じる。ラインナップの拡張として理にかなった方法であり、トラベルの側面に焦点を当てているのだ。

僕は第1世代のS302を、新しいモデルと交換するつもりはないかもしれないが、ダイビングするよりも旅行するほうが多い方(そういえば僕もそうだった)にとっては、S302のシリーズにバラエティ性と新機能をもたらす素晴らしいオプションとなりそうだ。

bremont S302
基本情報
ブランド: ブレモン(Bremont)
モデル名: スーパーマリン S302(Supermarine S302)、スーパーマリン S302 ジェット(Supermarine S302 Jet)

直径: 40mm
厚さ: 13mm
ケース素材: ステンレススティール、アルミニウム製ミドルバレル
文字盤: ブラック、ブルー、グレー
インデックス: ペイント
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: ブレスレット(スーパーマリン S302 ジェットはなし)、レザーストラップ、ラバーストラップ

bremont S302
ムーブメント情報
キャリバー: BE-932AV(ETA 2893-2ベース)
機能: 時・分・センターセコンド、日付、第2タイムゾーン(コーラーGMT)
パワーリザーブ: 約50時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 25
クロノメーター: あり、ISO 3159認定
追加情報: アナクロ社製ヒゲゼンマイとグリュシデュール製テンプ

価格 & 発売時期
価格: ブルー/グリーン&ストラップは3750ドル(日本円で約56万2000円)、ブルー/グリーン&ブレスレットは4200ドル(日本円で約62万9000円)、ジェットは4250ドル(日本円で約63万7000円)、オーシャンLE&ストラップは4000ドル(日本円で約59万9000円)、オーシャンLE&ブレスレットは4450ドル(日本円で約66万7000円)
発売時期: HODINKEE Shopを含むブレンモン正規販売店で現在発売中
限定: あり、グレーダイヤルの“オーシャン”LEは世界限定400本

L1、L2以来となる同ブランドの時計ラインナップの大きな進化を発表した。

  • 2008/06/17 (火) 18:59

しばらく遅れたが、Lシリーズが店頭に並ぶのは昨年になってからだった(その後、モデル名はZM 1とZM 2に名称が変更されている。詳しい記事はこちら)。初期の限定2モデルで成功を収めた1年後、ライカは時計の世界を拡充させる準備を整え、新しいZM 11を介してそれを実行したのだ。

ZM 11は、ZM 1と2で確立された型を破壊するモデルだ。チタンまたはスティール製の2種類から選べるZM 11は、41mmサイズのライカのスポーツウォッチである。文字盤はブラック/レッド(ローンチエディション)、コーヒーブラック(ゴールドトーンのアクセントを加えたブラウングラデーション)、パテックフィリップスーパーコピーミッドナイトブルー(ホワイトメタルのアクセント)の3種類から選べる。

ライカ ZM 11
ライカ ZM 11のケースサイド
ライカ ZM 11
厚さは13mm、ラグからラグまでの長さは45.3mm、防水性は100m、風防は強化AR処理されたデュアルドーム型を採用。さらにブレスレット、テキスタイルストラップ、ラバーストラップの3種類(すべてチタンまたはSS製)から選ぶことが可能なのだが、すべてのストラップオプションには“ライカイージーチェンジ”と呼ばれる、新しいプッシュボタン式クイックチェンジシステムを装備している。

デザインスピリットはモダンで洗練され、間違いなくApple Watch以降のそれを思わせる。初期のアイクポッドに近いが、もっとドイツ的な雰囲気だ。フーデッドラグが、滑らかに角張ったラウンドケースに流れるようにデザインされ、そこにシンプルなリューズでフィニッシュしている。ベゼルは装飾されておらず、また最小限に文字要素を抑えてインデックスや針を最大限活用し、大きな文字盤を縁取る。3つのダイヤルすべてにディープな水平線デザインを与え、その溝のなかに2色目のカラーを取り入れている。これはローンチエディションが最も顕著で、ブラック文字盤のラインがさりげなくも刺激的なレッドのアクセントで埋め尽くされていた。

ライカ ZM 11のブレスレットバージョン
日付表示は3時位置に設定されているため、判読性は極めてシャープだ。針やインデックスには複数の仕上げを施しているため、マクロレンズで覗いてもそこには光と戯れる光景があり、かなり高級感がある。サテン仕上げの文字盤を囲むように、見返しリングには小さなミニッツトラックがあり、ZM 1、2のやや伝統的な文字盤よりもはるかにスポーティでユースフルな文字盤に仕上がっている。

SS製ブレスレットが付いていたからかもしれないが、ZM 11はブラックやブラウンよりもブルーのほうが断然好みだった。3つともまとまり感があり、とてもきれいに作られているが、ブルーダイヤルとシルバートーンのアクセントが僕の手首にいちばんなじんでいた。

ライカ ZM 11のイージーチェンジシステム
ライカ ZM 11のイージーチェンジシステム
ライカ ZM 11、ブルーダイヤル
ブレスレットと言えば、それはZM 11の魅力的で最も印象的なパーツである。鎧のような短いリンクがうまく連動し、プッシュボタン式の隠れたクラスプへとつながる、完璧に一体化したデザインだ。直感的に操作できる、かなりカメラ的なイージーチェンジシステムとマッチしたこのブレスレットはライカらしさをうまくデザインしたもので、ライカというブランドそのものを体感できるものだった。

装着してみると、(薄いベゼルと比べて)文字盤の大きさに比例して想像以上に大きく見えたが、カーブを描いたラグとフラットな裏蓋が、ZM 11をしっかり固定するのに役立っている。SS製のブレスレットモデルは少し重く感じたが、どのモデルもSS製で78g、チタン製で61g(ケースのみ)と、どちらのバージョンも特に負担になる重さではない。僕はチタンが好きなのでより軽い金属のほうに余分なお金を使うだろうが、SSの見た目と感触は素晴らしかった。

ライカ ZM 11に搭載されたCal.ライカ LA-3001
3本のストラップのいずれにおいても、ZM 11は同ブランドのこれまでの腕時計よりもかなりスポーティに感じられ、バランスのとれたプロポーション、比較的短い長さ、一体化したラグによる統制のおかげで、よりカジュアルな雰囲気と非常に快適な装着感がマッチしている。

今回、ZM 11にはスイス製の自動巻きムーブメントを搭載しているため、ZM 1と2からの様式的な逸脱は機械的な性質の逸脱とも合致している。ZM 1と2(当時はL 1とL 2)の最初の発表に続いてリリースされたこれらの時計には、エンジニアリング会社であるレーマン・プレシジョン社(Lehmann Präzision GmbH)とのコラボレーションによる独自のムーブメントを誇らしげに搭載している。

ライカ ZM 11のリストショット
より大規模な生産範囲と、販売ネットワークが大幅に拡大されると予想したため、ZM 11をより大量に生産できるムーブメントを必要としたライカは、ル・ロックルに拠点を置くスイスのクロノード社に依頼をした。その結果、35石、約60時間パワーリザーブを備えた、2万8800振動/時の自動巻きムーブメント、ライカLA-3001が完成した。これはクイックチェンジデイト機構を備え、日差-4秒~+6秒の精度を示す。

シースルーバックをとおして見えるLA-3001は素晴らしい外観を持つ。ブラスト仕上げとサテン仕上げをミックスしており、ZM 1と2のムーブメントの仕上げに合ったインダストリアルな雰囲気を醸し出す。予想どおり、より多くのユニットに対する需要の高まりに対応できるしっかりとした自動巻きムーブメントを望むなら、スイスは有能なソリューションの供給源であり続ける。

ライカ ZM 11のリストショット
範囲について言えば、これはZM 11の登場が“ライカウォッチ”というアイデアの成功を示すように、物語のなかで最も興味深い要素のひとつかもしれない。毎年のZM 1、2の年間生産本数は少なく(報道によると1000本以下)、そのうちの約3分の1は、ライカを所有したことのない消費者に販売されている。これは驚くべきことかつ魅力的なことで、このラインが立ち上げられたときの成功の想定と食い違っていることに気づいた。

間違いなくZM 1と2は素晴らしいハイエンドカメラを製造するブランドによる、素晴らしいハイエンドウォッチだと思うが、ライカを体験したことのない購入者がこの時計に興味を持つとは思っていなかった。ライカはZM 11を11月から、世界中にある約100の小売店舗のうち3分の1の店舗で販売する。その後、2024年1月から全店舗へと展開していく予定だという。

ライカ ZM 11
価格はストラップに付いたSS製が6775ドル(日本円で約101万5000円)からで、フルチタン製のローンチエディションが8150ドル(日本円で約122万1000円)だ。高級な価格帯ではあるが、ドイツ製の(そして複雑機構の)ZM 2が定価1万4000ドル(日本円で約209万9000円)で発売されていることを忘れてはならない。

ライカの時計という概念を押し広げたものとして、ZM 11は、ZM 1やZM 2といった製品とは一線を画していることは確かだが、この時計はよりライカの作品に近いとも感じる。デザインはすっきりとしていて邪魔にならないので、ブレスレット一体型のスポーツウォッチという飽和状態にある世界のなかでも際立った存在感を放っている。

ライカ ZM 11のバックル
ライカ ZM 11のリストショット
ライカ ZM 11のリストショット
スイス製ムーブメントに裏打ちされた魅力的なデザインと、ライカの細部へのこだわりを備えたZM 11はブランドのウォッチメイキングにおける第2章として意図的かつ具体的で、よく実現していると思う。また比較的手ごろな価格帯に設定されたことで、この新しいコレクションの新規ユーザーは広がるだろう。

ZM 1と2がライカの時計製造におけるコンセプトとして成功した。ZM 11は、ネックストラップやカメラバッグを必要とせずにライカを体験できる、快適で現代的、そして考え抜かれたデザインのプラットフォームによって、その範囲を広げるための入門機であると感じる。

ブライトリングのデザイナー、シルヴァン・ベルネロンは自らアシンメトリー。

  • 2008/06/16 (月) 12:45

今ある刺激的なインディペンデントブランドをどのように取り上げるかは難しい。多くの場合、新しい時計メーカーが時計愛好家やコレクターから支持を得ると、時計が完全に完成するまでに数年にわたって販売され続ける。

ブライトリングのクリエイティブディレクター、シルヴァン・ベルネロン(Sylvain Berneron)氏の新ブランド、ベルネロンがまさにそうだ。ベルネロン氏はこの2年間、初の自社製時計であるミラージュの開発に取り組んできた。一見するとパテック フィリップ カラトラバとアシンメトリーなカルティエ クラッシュの美しいマッシュアップのようにも見える。しかし、ベルネロン氏は自身のビジョンに妥協することなく、なかも外もユニークなものを提供する時計を作り出すことに成功したのだ。

berneron mirage sienna
イエローゴールド製のベルネロン ミラージュ “シエナ”。

「ある家に入ったら、ひとつのドアでしか出入りできないと言われたとしましょう」とベルネロン氏。「ただそのドアを通り抜けたいだけです。私にとって、ウォッチメイキングにおけるそのドアはシンメトリーでした」。ベルネロン氏は過去15年にわたって、大手ブランドのプロダクトデザイナーとして活躍していた。最初はBMWのような大手自動車会社で働き、その後ブライトリングへと移る。ブライトリングのCEOであるジョージ・カーン(Georges Kern)氏との関係性のおかげで、非常勤でブランドのクリエイティブな仕事をする傍ら、ブライトリングスーパーコピー代引き 激安独立したブランドを立ち上げることができた。

ベルネロン氏は「デザイナーはその仕事をしているブランドのトーンや要望に合わせて、自分を制限しています」と言う。「でも自分のためだけに何かをして、あの忌々しいドアを開けたいと思うようになったのです」。ミラージュでは左右非対称のケース、ムーブメント、ゴールドキャリバー、針の重ね方の順序など、彼が時計業界で働いて以来ダメだと言われてきたことをすべてやっているという。

「このプロジェクトを“ミラージュ”と呼んでいるのは、時計業界の“ダメなこと”をひとまとめにしたもの自体が存在した、ほとんど幻想に近いものだからです」

まずそれはムーブメントから始まる。ベルネロン氏は、ムーブメント製造会社であるル・セルクル・デ・オルロジェ(Le Cercle de Horlogers)と共同で、ミラージュのためにアシンメトリームーブメントを開発した。ル・セルクルはトリローブ、ビバーウォッチ、ルイ・ヴィトンといったブランドにムーブメントを供給する著名な会社だ。その結果ミラージュでは、わずか2.3mm厚のゴールド製メインプレートとブリッジを備えたキャリバーが実現した。F.P.ジュルヌ以外で、金無垢をムーブメントの素材に採用することはほとんどのブランドがやらない。ベルネロンのキャリバーは、現在生産されている金無垢ムーブメントのなかで最も薄いものとなる。

ムーブメントの美観は重要だが、ベルネロンはパフォーマンスも妥協していない。この手巻きキャリバーは約60時間のパワーリザーブを確保し、2万1600振動/時で時を刻むなど、このような薄型ムーブメントとしては印象的なスペックだ。また古い懐中時計のクロノメーターを参考にしたテンプも備えている。

 最も注目すべきは、ムーブメントの形状である。

「このプロジェクトで最も難しかったのは、外部の意見を説き伏せることでした」と同氏。同僚やサプライヤーはみな、彼のより大胆な衝動を抑えようとしたというのだ。「アシンメトリーなムーブメントを作りたいとル・セルクルを説得するのに4週間かかりました。そして、私が実際に素材用のゴールドを注文しようとサインするまで、誰もが実際に金無垢キャリバーを作るとは思わなかったと言われました」。ゴールドムーブメントを見かけないのには単純な理由がある。サプライヤーはゴールドで作るのを嫌がり、通常使われる真鍮とは別の機械を必要とするからだ。ベルネロンの場合資金面でのコミットメントもあり、ムーブメントの注文には費用の50%を前払いする必要もあった。

sylvain berneron gold caliber
 通常、アシンメトリーのムーブメントはその用途をケースから切り離してしまうために作られない。もっと簡単に言えば、もしベルネロン氏がラウンドムーヴメントを注文してプロジェクトが失敗した場合、少なくとも彼らはそのラウンドムーヴメントを刷新して、より伝統的なケース形状で再利用することができる。これが変形キャリバーがめったに生産されない理由のひとつである。

 これは伝統的な“複雑機構”ではないが、ベルネロン氏は別の興味深い方法で慣例を打ち破った。彼は文字盤上に設置された針の通例順序を逆にし、短い時針を長い分針の上に置いたのだ。ベルネロン氏によると、これをすることでクリスタルがより劇的に湾曲できて、時計の厚みを15%薄くできると言うのだ。

我々がなぜ気に入ったのか
asymmetrical watches
クラッシュとカラトラバがバーに入ると...

 これはミラージュの特殊なデザインにつながるもので、ベルネロン氏はふたつのインスピレーションを挙げている。まずブレゲ、ヴァシュロン、そしてパテック フィリップ カラトラバのクラシカルな時刻表示のみの時計である。第2に、彼はジルベール・アルベール(Gilbert Albert)、ルパート・エマーソン(Rupert Emmerson、60年代と70年代にかけてカルティエ ロンドンのデザイナーを務めた人物)、そして多くのMB&Fウォッチを手がけたデザイナー、エリック・ジルー(Eric Giroud)氏の作品に目を向けた。

「芸術と技術を完璧に融合させるために、このふたつのインスピレーションを融合させようとしました」とベルネロン氏は述べる。「ミラージュが新しいアプローチであるのは、芸術により技術を損なわず、その技術が芸術の感情に妥協していないからです」

 その結果、カラトラバとカルティエ クラッシュのどちらの派生とも感じさせない、中間のような非対称ケースが誕生した。ミラージュのサイズはラグからラグまでが42mm、直径が33.5mmである。3月にプロトタイプを試着しているのだが、その自然なラインは手首になじんでいた。

見方によってミラージュのデザインは、ダリに似たアートか、ピッチャーに注がれたサングリアを何杯か飲んだあとバーからふらふらと出てきたカラトラバみたいだ。私にとっては、考え抜かれたまとまりのあるデザインだと感じているが、それは単にシェイプウォッチのトレンドに乗ったデザインだからではない。タイポグラフィ、文字盤、ケース、ムーブメントはすべて時計製造の一貫したビジョンの一部であり、メカニズムとデザインが相互に機能している。巨大なテンプを支える湾曲したブリッジでさえ、ケースとダイヤルのラインを反映しているのだ。

 キャリバー以外だけでなく、ミラージュは文字盤、針、ケース、バネ棒に至るまですべてK18ゴールドで作られている。ベルネロン氏は、開発中に愛好家たちからのフィードバックを受けてこの決断を下したと述べている。“手を抜くな”というのが、興味を持った愛好家たちからのアドバイスだった。

100年後、時計職人が私の時計を開けたとき、どんな気持ちになるでしょうか?

– シルヴァン・ベルネロン(Sylvain Berneron)氏
「私がベルネロンをスタートしたとき、“最初の腕時計が誕生してから100年後に私が来たとしたら、人々はその仕事に注目するだろうか”と自問しました」とベルネロン氏は言う。「時刻表示だけの作品ならパテックやランゲを買うべきです。しかし私の知る限りこのような形をした時計のなかに、さらに変形ムーブメントを収めるというアプローチは、現代の時計においてはユニークなものだと思います」

 ベルネロン氏はミラージュに、YG製の“シエナ”と、ホワイトゴールドの“プルシアンブルー”の2種類を用意した。どちらもセクターダイヤルをイメージしたレイアウトで、フォントはベルネロン氏が自らデザインしている。ゴールドハンドも曲がっているが、これはこの不規則なシェイプによりまっすぐな針と同じような工具を使うことができず、手作業で削り、ポリッシュ仕上げを施している。

berneron prussian blue
18KWG製のミラージュ “プルシアンブルー”。

 彼は今後10年間、ミラージュの年間生産数を24本にすると約束しており、シエナとプルシアンブルーはそれぞれ12本ずつ生産される。最初のサブスクリプションは2024年前半、そして最初の通常販売は2024年後半に予定されている。サブスクリプションの価格は4万4000スイスフラン(日本円で約740万円)で、その後も通常販売期間ごとに、確実に値段は上がっていく。

 ベルネロン氏はInstagramでミラージュをゆっくりと焦らすように公開したことで、マニアやコレクターの注目を集めることに成功した。彼は2024年に納品される48本すべてのデポジットをほぼ受け取っているという。その理由のひとつは、カルティエやジルベール・アルベールなどのアシンメトリーウォッチコレクターの欲をかき立てたからに違いない。しかしよく見ると、ミラージュは単なる流行に乗った変形デザインではない。

berneron mirage sienna caseback
常識をひっくり返す。

 ミラージュの開発が進むこの1年間、私は何度もベルネロン氏と話をした。彼の時計づくりに対するビジョンについて私も共有している。メカニックは重要であるが、それは時の試練に耐えうる美しいデザインを作る役目を果たすためのものだ。ミラージュは伝統的な時計製造に対する彼の評価を新鮮に表しているに過ぎない。

 それでもすでに人気を得ていて、数十本もの(安くない)腕時計を販売し、しかも実用的なプロトタイプもない新しいインディペンデントブランドを取材することに葛藤は感じている(ベルネロン氏は年末までには完成させると言っている)。ただ彼と話をして、ディテールやプロセスへのこだわり、そしてブライトリングでの経験を目の当たりにした上で、約束を果たしてくれると信じている。しかし、すでにミラージュの購入を決めている顧客にとっては思い切った決断だっただろう。

 ベルネロン氏はまた、彼が受けたこの注目の高まりについても称賛に値する。というのも彼はこの2年間、熱心にコレクターと向き合い、彼らからフィードバックを得てきた。しかしそれは特定の買い手が“次の大物”を推測したがるという、大きな兆候のひとつでもある。この件に関してはベルネロン氏の責任はなく、ここ数年の時計収集が急成長したことによる大きな問題である。

次に来るもの
berneron mirage watch
berneron mirage watch
ミラージュのあとも、ベルネロン氏は複雑さを増したものを作りたいと語っている。彼はデュアルタイムや、パーペチュアルカレンダーについて考えているが、今後のプロジェクトはこれらの複雑な問題を別のアプローチで解決する必要がある。ミラージュは伝統的なスモールセコンドに対する彼の見解であり、またベルネロン氏はすべてのプロジェクトにも同じアプローチを取りたいとも言っている。

「100年後、時計職人が私の時計を開けたとき、どんな気持ちになるでしょうか?」とベルネロン氏。「すべてがゴールドでできていて、私たちが近道をしなかったと気づいたとき、それは素晴らしい瞬間になると思います。私は文字盤に自分の名前を入れました。それは自分自身、私という人間、そして私が何を信じているかを反映しているのです」

スタジオ・アンダードッグ(Studio Underd0g)の最初のクロノグラフコレクションを紹介したが、

  • 2008/06/16 (月) 12:29

この若きイギリスブランドは、フィールドウォッチにその遊び心を取り入れた第2弾、フィールドコレクションを発表した。第2次世界大戦時のダーティダースをインスピレーション源としながらも、この4本の新作はアンダードッグならではのユーモア溢れる方法でそのテーマに応えている。

studio underd0g field watch collection
スタジオ・アンダードッグのフィールドコレクションは直径37mm(ラグからラグまでは46mm)、ラグ幅18mmのステンレススティール製ケースを採用している。このイギリスの新興ブランドは、第2次世界大戦中に始まったダーティダース製造のために定められたイギリス国防省の仕様を出発点にしたという。しかしながら、現代の技術と素材を用いることで完全に現代的なフィールドウォッチを作り出している。

studio underd0g made in england
話はダイヤルから始まる。スタジオ・アンダードッグは、まずベースとなるダイヤルにスーパールミノバを7層塗布し、フィールドコレクションの各モデルが暗闇で鮮やかに光るように仕上げた。スーパーコピーベースダイヤルの上には1mm厚のサファイアディスクが取り付けられ、そこにブランド名、数字、ミニッツトラックがプリントされている。2枚のダイヤルは、ふたつのネジ(3時と9時位置)で固定されている。サンドウィッチ文字盤の新しい試みである。サファイアディスクに施された印刷はベースダイヤルの上に浮いているように見え、斜めから見ると特に目立つ影を落とす。暗闇では数字が明るく照らされた背景の上に浮かんでいるように見え、これもまたクールな演出だ。

studio underd0g watches
ピンクレモネード(Pink Lem0nade)

studio underd0g watches
ミッドナイト(Midnight)

studio underd0g watches
フルムーン(Full Mo0n)

スタジオ・アンダードッグ初のクロノグラフコレクションと同様に、ダイヤルの選択肢は比較的保守的なものからカラフルなものまで幅広い。最も鮮やかなのは、ピンクからイエローへのグラデーションが施されたピンクレモネードだ。スタジオ・アンダードッグによると、このグラデーションを実現するには、ほかのダイヤルバリエーションとは異なる手法を採用する必要があったという。次にステファニーブルー、ここ数年で時計界に広まったある有名なブルーをブランドがアレンジしたものだが、こちらはより落ち着いたスカイブルーとなっている。フルムーンは、暗闇でオフホワイトのダイヤルが輝く様子がこのダイヤルの名前の由来になっている。最後にブラックのミッドナイトは最も保守的で、ブラックのダイヤルに夜光のインデックスと数字が組み合わされている。ミッドナイトダイヤルは、全面夜光ダイヤルではない唯一のバージョンである。

studio underd0g field watch lume
ほかの3つのモデルは、日中におけるそれぞれの色に対応するように暗闇でライトアップする。ダイヤルのベースに施されたスーパールミノバは、タイメックスのインディグロに次いで明るい。最近、ほかのブランドでも採用されているクールな演出だが、スタジオ・アンダードッグの遊び心あふれるデザインとは特に相性がいい。フィールドコレクションは、日中でも十分に美しい。しかし暗闇のなかで光り輝く演出は、まだまだ腕時計を楽しむことができるという安らぎを与えてくれる、愛情たっぷりのおやすみのキスのようなものなのだ。

 スタジオ・アンダードッグのセカンドコレクションは、表面的な楽しさだけでなく、製造工程にも力が入っている。すべての時計は現在イギリスで組み立てられており、品質管理はホロロギウム(Horologium)という工房が担当。フィールドコレクションはセリタの手巻き式SW 210-1を使用しており、フィールドウォッチらしく秒針停止機能が搭載されている。レザーストラップはカーフスキンまたはスエードで、イギリスのThe Strap Tailorから調達。箱から出してすぐにソフトでしなやかなつけ心地が味わえる。

 スタジオ・アンダードッグのフィールドコレクションの販売価格は900ドル(日本円で約13万5000円)で、11月1日(米国時間)より予約受付を開始する。先着500名にクリスマスまでの配送が保証され、その後順次配送される。

我々の考え
england studio underd0g field watch
 新作のフィールドコレクションは楽しげでありながら1000ドル以下に価格を抑えつつ、優れた技術力も披露している。リチャード・ベンク(Richard Benc)氏と彼が2020年に設立したブランドにとって、美学と製造のステップアップを象徴する価値ある2ndアルバムだ。

studio underd0g field watch wrist
 まず、これは個人的な好みだが、この時計は私の腕に驚くほどよくなじむ。その大きさは往年のフィールドウォッチを彷彿とさせ、ドーム型クリスタルによってそれが強調されている。サイズは昔ながらのものだが、スタジオ・アンダードッグが採用している製造技術の一部には斬新なものも見られる。薄型のサファイアディスクは全面夜光ダイヤルの上にあり、その両者は2本のピンで固定されている。この溝が入ったピンは金属性の吹き出物のようにも見えるが、工業デザイナー出身のベンクにこのことについて尋ねると、なぜここに置かれているのかがわかった。

 彼はこのピンは役目を表現した完璧なものだと説明した。ピンをデザインのなかに隠すこともできたが、ピンは多層ダイヤルを固定するものであり、彼はピンを見せることがバウハウスデザインの流儀である“形は機能に従う”を実践することだと考えたのだ。

「これらのピンは、見た目以上に重要なことがあることを示す手がかりの第1歩です」とベンクは言う。「このピンが、ストーリーを辿る手助けをしてくれるんだ」。

studio underd0g field watch wrist lemonade
 ダイヤルには目に見える以上の魅力が潜んでいる。それは強調された立体感だ。真正面からはインデックスとブランドロゴがわずかに影を落とし、浮き上がっているように見える。ダイヤルを傾けて横から見ると、その効果はよりドラマチックになり、ベースダイヤルの影の形から数字の全体像が確認できるほどである。その質感はゼニス デイトナに見られる“ポーセリン”に似ているが、より大胆で意図的だ。数字のフォントは少しシンプルで、ありふれたヘルベチカに寄り過ぎているかもしれないが、もっと派手なフォントだとちょっと行き過ぎてしまうような気がする。フィールドコレクションのデザインはすでに十分完成されている。

studio underd0g field watch dial
studio underd0g field watch dial
 ケースのプロポーションはバランスが取れており、直径37mmのケースとやや狭い18mmラグ(ストラップは16mmまでテーパーする)が、フィールドコレクションにヴィンテージ風の雰囲気を与えている。クローズドケースバックなのも賢明な判断だ。手巻き式のセリタSW210は手堅いムーブメントであり、スタジオ・アンダードッグのスイス製ムーブメントへの取り組みの第1歩を象徴している。だが、見た目には特別なものではなく、サファイア製ケースバックの採用により厚みが1mm単位で増えるほどの価値はない。

sutdio underd0g watches wristshot
sutdio underd0g caseback
 私のお気に入りはオフホワイトの“フルムーン”だ。明るいけれどもどこか昔風で、クリームがかった色はまるでパティーヌのようだ。“ミッドナイト”はかなり控えめで、スタジオ・アンダードッグがインスピレーション源とするWWWウォッチを最もよく模倣している。“ピンクレモネード”はその名のとおり、暑い夏の日にすっきりと爽やかな楽しさを感じさせてくれる(スタジオ・アンダードッグのファーストコレクションに登場した“ウォーターメロン”とは似て非なるものだ)。最後に、“ステファニーブルー”は、このブランドの大胆かつ華やかな挑戦と、より伝統的な志向との中間に位置している。私にとっては最も印象が薄かった(しかし、これはおそらく4色のなかでいちばん売れてしまうということなのだろう)。

studio underd0g field watch lume
 スタジオ・アンダードッグの第2弾は、時計は楽しいものだと再認識させてくれたクロノグラフコレクションに続く強烈な仕上がりとなった。内部に搭載されたスイス製ムーブメントも、ダイヤルに施されたユニークな加工も、スタジオ・アンダードッグによるウォッチメイキングがステップアップしたことを示している。価格もそれ相応に上がるが、数日間着用した後でも900ドル(日本円で約13万5000円)がどこに投じられたのかを疑問に思うことはなかった。楽しいカラーや暗闇で光る機能だけではなく、 ほかのブランドには見られないデザインで、よく練られた時計だと思う。そしてそれこそが私がアンダードッグに求めるすべてだ。

studio underd0g field watch collection
基本情報
ブランド: スタジオ・アンダードッグ(Studio Underd0g)
モデル名: フィールドコレクション
型番: ピンクレモネード(02FSBE)、ステファニーブルー(02BLB)、フルムーン(02BEBR)、ミッドナイト(02BKG)

直径: 37mm (ラグからラグまでは46mm)
厚さ: 12mm(サファイアクリスタルを除くと9.8mm)
ラグ幅: 18mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤色: 全4色、ピンクレモネード(イエローとピンクのグラデーション)、ステファニーブルー(スカイブルー)、フルムーン(ホワイト)、ミッドナイト(ブラック)
インデックス: 数字とブランドロゴは、ベースダイヤルの上に配置された厚さ1mmのサファイアディスクにプリント
夜光: ベースダイヤル全体にスーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: イギリスのThe Strap Tailor社製レザーストラップ
追加情報: イギリスにて組み立て。品質管理はオロロジウム社が担当し、フィールドコレクションに2年間保証を提供している。

studio underd0g field watches
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ SW210-1
機能: 時・分・秒表示(秒針停止機能付き)
直径: 25.6mm
厚さ: 3.3mm
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 19

価格 & 発売時期
価格: 900ドル(日本円で約13万5000円)
発売時期: 11月1日(水)よりUnderd0g.comにて予約受付を開始。先着500本限定で2023年クリスマスまでの配送を保証。