ほとんどらんちゅうの仔引き経験がない 金魚一道 U による 冬眠明けから品評会エントリーまでの戦いの記録。
MB&FがHM11 “アーキテクト”をドバイ・ウォッチ・ウィークの前日に発表するという選択には、何か詩情的なものを感じる。この時計は逆説的ではあるものの、最近のブッサーのオロロジカル・マシンに見られる(こんなことは言いたくないが)予測の範疇を出ないクルマ的なデザインから、遠く離れたところにあるように見える。これは、ブランドが私に言ったように“手首のための家”なのだ。
別に、MB&Fの時計が一般的に巨大なサイズであることを評しているのではない。HM11のサイズは直径42mmで(それでもかなり大きい)厚さ23mmと、比較的小さい。また、HM11の19万8000スイスフラン(日本円で約3355万円)という価格を非難しているのでもない。MB&Fのオロロジカル・マシンのほとんどは、まるでほかの“モノ”のような外観をしている(その多くはクルマだが、なかには意図せず……、そう、ナスの絵文字のようなものもある)。今回の時計は、モダニズムと有機的建築の哲学を取り入れた1960年代と1970年代の近未来的建築からインスピレーションを得ている。
MB&F HM-11 "The Architect"
マッティ・スーロネン(Matti Suuronen)が1970年にグラスファイバー強化プラスチックでデザインした住宅、フトゥロは、MB&FのHMに対してしばしば目にするのと同じような反感(または信じられないというような反応)を受けた。インフレ調整後のフトゥロの価格は約10万5000ドルであった。その外観は、アンティ・ロヴァーグ(Antti Lovag)の“パレ ビュル”(水まわり設備なし)スーパーコピー時計とチャールズ・ハートリング(Charles Haertling)の“ブレントンハウス”を足したような感じだ。ブッサーは実際のところ、妻はこれらの建物に住みたがらないだろうが自分は住んでみたいと認めている。ブッサーに“これはいい時計になりそうだ”と思わせたのは、“ブレントンハウス”に関するInstagramの投稿だった。
上記のどの建物もそうであるように、どのHMも(HM5やHM8 Mark 2を除いて)自分のためにあると感じたことはない。しかし、少なくともそれらを解釈し、魅力を理解するために最善を尽くしている。
Charles Haertling Brenton House
チャールズ・ハートリングの “ブレントンハウス”。
1960年代と1970年代を振り返ってみると、当時の建築家たちはしばしば伝統的なデザイン言語からの脱却を常に試みていた。伝統的なデザインは大衆にとって快適で親しみやすいものであったものの、近代的な建築技術、資材、工学的知見の活用による発展が難しかったのだ。このように聞くと、こうした建築家たちの努力と近代化デザインへのアプローチが、(意外にも)長年にわたってブッサー魅了してきたことに驚きはないだろう。不可能に近い形状のサファイアクリスタルや加工が難しいチタンなど、ブッサーのチームが乗り越えなければならなかったのと同じ課題が、そこにもおしなべて登場する。そして、デザインリーダーであるエリック・ジロー(Eric Giroud)は、これまでのように自動車業界に目を向けるのではなく、建築のバックグラウンドをHM11のレイアウトに反映させた。
ブッサーとジローは、HM11を4つの部屋を持つ家として構想した。それはモンサントの“ハウス・オブ・フューチャー”のようなもので、中央のエリアとそこから枝分かれした快適なスペースを備えている。HM11の中央の空間には、ダブルドーム型サファイアガラスの下に、1分間で逆回転するセンターフライングトゥールビヨンが配置されている。この時計は2色展開で、ひとつはPVD加工を施した“オゾンブルー”の地板を、もうひとつは5Nゴールド製の地板を使用したもので、それぞれ25本ずつが用意される。しかし、こうした華やかな要素もさることながら、本当のパーティはHM11ハウスのサイドルームで開催されている。
MB&F HM-11 "The Architect"
実用面の話をすると、HM11はHM3以降のすべてのオロロジカル・マシンと同様に、手首に斜めに装着して時間を読み取ることになる。そう考えると、これはMB&Fがこれまで製造してきた時計のなかでもっとも読みにくい時計と言えるかもしれない。私は幸運にも視力が1.0であるため、変わったダイヤルの色や針の組み合わせ、あるいはカルティエのタンク ア ギシェのような奇妙な表示であっても、視認性についてとやかく言うことはない。実際、この手のレビューでは“木を見て森を見ず”という状況に陥り、苦労することが多い。しかし、いずれにしても(そして今回も)、これらが実用的な時計というよりは、その名が明示しているように手首のための彫塑的な機械式時計であるということが重要になってくる。視認性と実用性を求めるなら、MB&Fの“レガシー・マシン”のラインナップから好きなものを選べばいい。レガシー・マシンでさえも市場で特別視認性に優れた時計とは言えないが、いずれにせよあなたが求めるものはHMではないだろう。
MB&F HM-11 "The Architect"
この場合あなたが実際に購入することになるのは、1960年代から1970年代の偉大なデザイナーたちに向けた素晴らしいオマージュであり、全体的にポッドのようなデザインをさらに推し進めた意匠である。その証拠に、4つの部屋のうちひとつ目の部屋には、先端が赤い2本の白いアロー針が付いた小さなディスプレイが見える。しかもその針は0.6mmほどとかなり小さい。針はディスプレイの中央から放射状に伸びる短いロッド上の金属球を指しており、15分間隔ではシルバー色、それ以外の5分間隔では真鍮色となっている。その計時はアメリカの工業デザイナー、ジョージ・ネルソン(George Nelson)が手がけたボール クロック “Horloge Vitra”からインスピレーションを得たものだ。このデザインは私の記憶に深く刻み込まれており、HM11を見るまで誰の作品かを考えたこともなかった。そのすべてが高さ約11.45mmの窓のなかに収められているのだから、はっきり言って時計のフェイスとしてはそれほど大きなものではない。
MB&F HM-11 "The Architect"
Horloge Vitra George Nelson
“ボール クロック”。courtesy Vitra.
トゥールビヨンムーブメントの水平面からこの時計(そしてこれから紹介するほかの部屋)のような垂直ディスプレイに動力を変換する方法として、このブランドは円錐状の歯車を採用し続けている。この時計のそれは私が覚えているどのHMよりも際立っており、MB&Fの時計をここまで魅力的なものにしている創意工夫を知るにはうってつけのモデルとなっている。
MB&F HM-11 "The Architect"
ほとんどの現代建築プロジェクトと同様に、この時計でもエネルギー効率がキーとなってくるのだが、HM11は2種類の方法でそれを実現した。ひとつは2部屋目にある。そこにはパワーリザーブに相当するような表示があり、ゼンマイに蓄えられた96時間の動力をカウントダウンする。
MB&F HM-11 "The Architect"
ひとつ目の部屋からふたつ目の部屋を見に行くのに、体を無理にねじる必要はない。それどころかこの時計は、直感的に、簡単にひねるだけで中心軸を中心に一方向に回転する。45度または90度ごとに位置が固定されるため、勝手に回ってしまうことはない。実際、45度だけ回転させれば、“ドライバーズ”ウォッチのようにより見やすくなる。これらすべてが長いラグを備える軽量なチタン製フレームに支えられている。
MB&F HM-11 "The Architect"
MB&F HM-11 "The Architect"
3つ目の部屋は昨今あまり目にしない斬新なもので、摂氏と華氏のどちらかを選べる温度計となっている。事実、この時計は温度計を備えた数少ない近代的な機械式時計のひとつだ。この種の複雑機構はかつてポケットウォッチにも搭載されていたが(例えば、ユール・ヤーゲンセン作のものをいくつか見た記憶がある)、現代の市場ではボール社のものしか思いつかない。そのような時計は、着用者が一定時間手首から時計を離さなければ、体温が温度計の機能に影響を及ぼしてしまう。つまり、1日中体温を計測し続けることになるのだ。だが、この新しいHM11にはそのような問題はない。
MB&F HM-11 "The Architect"
温度計のデザインにMB&Fの熟練した時計製造技術が用いられているという理由だけでも、(あまり役に立たないかもしれないが)かなりスマートな機構である。この時計はバネ式温度計を採用しており、コイル状の金属は温度が上がると膨張し、下がると収縮する。時計職人が学んできたヒゲゼンマイの加工技術が、どうやら温度計の調整にも応用されているようだ。
MB&F HM-11 "The Architect"
MB&F HM-11 "The Architect"
最後の“部屋”は、通常の時計であれば3時位置にある(この時計が時刻を見るためにセットされている場合、少なくとも)。この部屋にあるのは別の機能ではなく、時間設定用の透明なクリスタル製リューズで、ブランドはこの部屋を時計の玄関と呼んでいる。そこはリューズを載せるにふさわしい場所だが、当然ながらこれは普通のリューズはない。
通常のリューズには2mmのガスケットが必要だが、このリューズはサイズが大きいために若干の見直しが必要だった。その結果、2組のガスケットにより一種のダブルエアロックのようになっており、合計8個のガスケットがリューズに使用されている(時計の内部には19個使用されている)。これにより20mの防水性を実現した。しかし、リューズのサイズが問題を引き起こした。時計の初期設計ではリューズを引き出そうとすると、ドーム型クリスタル内のわずかな空気の真空圧によって即座に吸い戻されてしまうのだ。その解決策としてリューズの容積を大きくすることで、引き出したときのわずかな容積変化の影響を緩和したのである。ほとんどのブランドが時計の薄型化に取り組んでいるなかでおかしなことではあるが、これはスマートで必要な選択で あった。
最も多くの人が参加する最大規模の商業オークションが連続して開催され、今年は開催が延期されたものの隔年にはOnly Watchチャリティーオークションもある。また、高級時計財団(Fondation de la Haute Horlogerie's、FHH)の文化評議会、いくつかのブランドイベント、そして目玉となるジュネーブ時計グランプリ(GPHG)の投票・授賞式など、間違いなく2023年秋のジュネーブカレンダーがピークを迎えた時期だ。ご存じのように、GPHGは、我々の業界で言うところのアカデミー賞に最も近い。完璧ではないものの、業界が誇る最高のものであり、より広いコミュニティにとっては貴重なイベントである。私は今年、4回目となるGPHG審査員に選ばれ、1週間ジュネーブに滞在した。そしてそれは旧友に会ういい機会だった。というわけで、ジュネーブで過ごした時間(の一部)を、非公式な日記として少し紹介しようと思う。
日曜日: マンダリン オリエンタルでオークション&ウォッチトーク
今週ジュネーブで過ごした私の腕には? ロレックススーパーコピー代引き 激安 コスモグラフ デイトナ 126529LN “ル・マン”が巻かれている。
午前9時頃、ジュネーブに到着した私はホテルへと向かい、チェックインを終え、シャワーを浴びて身支度を整えた。その日曜日、私が特に見たいと思っていた数点を、サザビーズが出品していたのだ。当初気づかなかったが、オークションのためにマンダリンまで足を運んだことで、何年も会っていなかったコレクターコミュニティの中枢へと足を踏み入れることになる。マンダリンのメインエントランスからバーまでのわずか15フィート(約4.5m)のあいだに、マイケル・サフディ(Michael Safdie)、ダビデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)、そして友人のウェンディとアモス(ふたりはシンガポールにいる素晴らしいランゲコレクターだ)と出会った。
彼らに挨拶をしたのちセキュリティーを通過すると、唯一無二の存在であるクロード・スフェール(Claude Sfeir)がいた。クロードは伝説的なコレクターで、オークション界の中心人物である。彼は体調を崩したり、その前にはCOVIDが集まりを妨害していたため、お互いに会うのは何年かぶりだったが、彼は相変わらずとても親切で思いやりのあるコレクターだった。クロードと十分に挨拶を交わしたあと、私はオークション会場に向かった。すると会場の奥にいたロジャー・スミス(Roger Smith)を見つけた。彼が手掛けるプラチナ製のダニエルズアニバーサリーウォッチが、この後のオークションに出品される予定だったのだ。ロジャーは私の大好きな時計関係者のひとりなので、私は彼のところに行ってみた。すると彼は、何か違うものを身につけていることに気づく。プラチナ製のランゲ ダトグラフのファーストシリーズだ! これが“ダトー”(貴族に相当する称号)のお墨付きでなくて何なのか。
アニバーサリーウォッチセールの前にまだいくつかのロットが残っていたので、我々はロビーのバーにあるテーブルを囲んだ。そのグループにはロジャー、クロード・スフェール、私、ハムダン・ビン・ハマド(Hamdan Bin Humaid)というとても素敵な男性(私はすぐに、ネットで見た中東の独立時計に関する素晴らしいプロジェクトの仕掛け人だと気づいた)、
そう、こんな感じだった。しばらくしてから我々は皆、ロジャーの時計を見るためにオークションルームに戻った。これもまた、彼が2008年に工房設立のために売却した私物の時計だった。このロットは極端なスタイルで行われた。スフェールを含む4人の入札者と2人の電話入札者(そのうちのひとりはアメリカからのものと思われる)により、210万スイスフラン(日本円で約3億5580万円)以上で落札されたのだ。ほんの数年前ならむしろ誤解していたであろう時計にとっては、信じられない結果だと思う。
オークションのあと、何人かはロビーのバーに戻って昼食をとり、数時間話し込んだ。とても楽しい人たちとの素敵なソフトランディングで週のスタートを切れたことをうれしく思う。
月曜日: ラート美術館にてGPHG審査員として投票
前述したように、ジュネーブ時計グランプリ(GPHG)は、“時計界のアカデミー賞”のようなものだ。10年前、私に初めて審査員の依頼が来た。それ以来状況は大きく変わったが、最終的にGPHGは、毎年完璧ではないにもかかわらず(すべてのトップブランドが参加するわけではない)、高級時計製造のための絶対的に優れた賞であり、非常に高い評価を得ている。私は審査員として、事前に選ばれた候補の時計が並んだ部屋に12時間近く座り、議論し、無数のカテゴリの勝者に投票した。世界の偉大な専門家たちに囲まれながら、すべての時計を手にして詳細に見られた素晴らしい日である。しかしGPHGを特別なものにしているのは、審査員の質だ。私の朝のテーブルはマックス・ブッサー(Max Büsser)とヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)とモハメド・セディキ(Mohammed Seddiqi)だった。この3人は時計に詳しいと言えるだろう。
ヴィアネイ・ハルターが私の時計をチェックしている。
5つのカテゴリのあと、テーブルが入れ替わる。私の次のグループには、審査委員長のニコラス・フォルケス(Nick Foulkes)や、私が以前から会いたいと思っていた、東京に拠点を置く彼の名を冠したウォッチブランドを手掛ける飛田直哉がいた。情熱は言うに及ばず、その知識量には本当に感心させられた。ジョージ・バンフォード(George Bamford)、マーク・チョー(Mark Cho)、ダニエラ・デュフォー(Daniella Dufour)、クリスティアン・ハーゲン(Kristian Haagen)、Dimepieceのブリン(Brynn)など、昔からの友人たちにも会うことができた。ここでは、2023年のGPHGで候補に挙がっていたいくつかの時計を紹介しよう。
この日たくさんのことを考えていたが、12時間にもおよぶ審査はいつも驚きを与えてくれる。例えば、ジェブデ・レジェピ(Xvedet Rexhepi)の時計の美しさとか。今年の初めに完成予想図が公開されて以来、実機が見たくてたまらなかったこの時計は、想像していた以上に素敵だった。長いラグ(ある意味では、弟のレジェップがJPハグマンとともに製作したものに似ている)、細身の輪郭、そして考え抜かれた複雑機構は期待以上だ。しかし、これはまだ本来の機能を果たしていないプロトタイプだったため、今年のGPHGの投票では候補から外された。しかし、若いレジェピの未来は明るいと言えるし、この時計のために予約をした人たちは今後の展開に自信を持つべきだ。そして来年のGPHGで彼と再会できると確信している。
明るいパウダーブルーの文字盤は現代的だ。
リヤキャリバーはアンティークのように見える。私はこの組み合わせが大好きだ。
そのほかの感想としては、スタジオ・アンダードッグによるシーガル社製クロノグラフの解釈が素晴らしかったことだろうか。この非常に魅力的なレイモンド・ウェイル(同部門で優勝)もそう。私は至って真剣だ。下の写真は、この時計を正当に評価しているわけではないが、ケースと文字盤は非常によく考えられていて完成度が高く、チャレンジカテゴリでこの時計以外を考えるのは難しかった。
ウブロは、日本人アーティストの村上 隆氏とのコラボレーションによる新しいサファイアMP(これはマスターピースの略。正直に言うと、この言葉を先週末に知ったばかりだ。私たちは日々学習している)を発表した。完全に透明な花の形をしていて、厳密にいうと文字盤はない。スマイルフェイスのなかに鎮座するフライングトゥールビヨンだけがあり、そこから小さな針が突き出ていて、目を凝らすとインデックスが見えるようになっている。この時点で、この時計は時間を確認することが重要でないことは、誰もが理解したと思う。
技術的なスペックを分析する前に、村上氏が時代の流れに与えた影響を考察してみよう。というのも、これほど活躍の場が広い人が、ウブロスーパーコピー時計のデザインを手がけることはめったにないからだ。実際、スウォッチとG-SHOCKのライセンス契約を除いて、これは現存するアート × 時計のコラボレーションのなかで最もバリエーションが多いモデルだ。ほかに例があるだろうか? ぜひ私に挑戦してみて。
村上氏はコラボレーションに飛びつくのが好きなタイプのように見えるかもしれないが、彼は文字どおり現代ファッションのコラボレーションの祖だ。ヴァージル(・アブロー)が話題になるずっと前から、彼は一般消費者とファインアート、ハイファッション、ストリートウェアの橋渡しをしていた。
村上氏による“スーパーフラット”(ここで美術史の授業をする暇はない)なポップアートは、現代の視覚文化に浸透し、MoMaのギフトショップの枕にまでなった。これはマーク・ジェイコブス氏が村上氏に、ルイ・ヴィトンのミックスメディアプリント(マルチカラーのムラカミスピーディ万歳!)を依頼してからずっとあとのことである。カニエ・ウェストのアルバムアートから、2021年のメットガラでキッド・カディが身につけたベン・バラーのダイヤモンドセットチェーン、シュプリームのボックスロゴコラボレーションまで、村上氏はすべてを手がけてきた。彼の商業主義に対する本能を責めることはできないが、彼のアプローチはステッカー、枕、シャツから始まり、1500万ドル(日本円で約22億7580万円)もの彫刻に至るまで、ユニークで民主的なものだ。本当に、誰でも村上氏の作品を持ち帰ることができるのだ。
時計の話に戻ろう。Only Watchを含めると、これは村上氏がウブロのために手掛けた5本目の作品である 。
文字盤がない、いや、文字盤はあるがコンセプチュアルなものだ。時計の中央に配置される文字盤の代わりに、上部ブリッジのないフライングトゥールビヨンがデザインされている(ウブロで初めて連続生産されたセンターフライングトゥールビヨン)。そのトゥールビヨンは12枚の花びらで囲まれており、そのすべてが透明なサファイアでできているため、本質的にはスケルトンウォッチである。このMP-15は、輝度を最大限に引き出すためにサファイアケース、サファイアケースバック、サファイアリューズ、半透明の見返しリングおよびストラップを採用。村上氏は“モノクロだけど、色の制限はない”と言っていた。ポイントは、光が結晶をとおして屈折し、虹を作り出すという完璧なまでの透明度にある。
MP15 watch
このセンターフライングトゥールビヨンは約150時間のパワーリザーブを備えているが、これは純粋にタイプミスだと思っていた。ではこれはどうして実現したか? ウブロは巻き上げをサポートするために、充電可能なスタイラスを製作。これをリューズにセットすることで、センタートゥールビヨンを駆動する両方の香箱が完全に巻き上がるまでに100回転することを可能にしたのだ(普通の人間が指でこれだけの回転をかける労力は、想像に難くないだろう!)。
このクリアサファイアケースは50本の世界限定生産で、4367万円(税込)で販売される。
我々の考え
これを実際に見たことがあるのだが、完璧に近いと感じた。望むのであれば私やウブロを叩いてもいいが、今日も私は肯定的な意見にしがみつく。この時計は私のためのものではないが、私が時計のデザインに何度も求めているもの、つまり現代的なアプローチを満たしている。何でもかんでもヴィンテージの復刻版のようにはなりたくないのだ。いずれにしても、ウブロがそのためにあるのでないことは確かだ。
MP-15はセクシーなシルエットとポップな魅力を併せ持っている。これを達成するのは非常に難しいことだと認識しよう。徹底的にモダンだが、つけこなせる。それと同じように、私はしばしばRM(リシャール・ミル)にありがちな、時計デザインの枠を超えた発想を称賛している。それらは私たちに疑問を抱かせるほど先進的なのだ。私はウブロを熱心に崇拝しているわけではないが、RMが私を突き動かすのと同じように、自分が時計に何を求めているのかを問うようにウブロは問いかけてくる。私はいつも正統な華やかさを求めているわけではないし、すべてがクラシカルなデザインに包まれた複雑な過去へのオマージュである必要もない。伝統の重要性を誇張しすぎると、テクノロジーの皮肉の餌食になりやすいのだ。
パーペチュアルカレンダーは、スパイスのなかで最も愛されているバニラのように、美しく古典的でありながら最も退屈なものでもある。好みの二面性だ。どっちも好きでいい! またはどちらもナシか。どうすべきかは言えない。ここで私はAPのコンセプトモデルとスマイリーRMについて考えている。テクノロジーが物理的な領域への依存を減らしている今、これらのブランドが伝統的な時刻表示機能の外に出て行こうとしているのは偶然ではない。念のために言っておくが、私がこれを身につけるとは言わないが村上氏がこれをつけるのを想像してもいいし、リル・ウージーがこれを身につけるのを想像してもいいし、ファレル(・ウィリアムス)がこれを身につけるのを想像してもいい。どうかもう1度考えてみて欲しい。
Murakami wearing MP15
この時計は宇宙船には見えないし、現代的なデザインを満足させる必要もない。それは彫刻的であり、冗談のようであり、花の形をしているが、ほとんど無定形だ。透明だが、光が屈折する。いろいろなことが起きている。私は村上氏自身が、この作品を独立したものとして完全に受け止めている印象を受けた。いままでのコラボレーションのときよりもはるかに。
私からのアドバイスは、1歩下がって、感情の熱に飲み込まれすぎないようにすること。誰かが変革の担い手となって、十分に水を満たさなければならないのだ!
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基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア(MP-15 Takashi Murakami Tourbillon Sapphire)
型番: 915.JX.4802.RT
直径: 42mm
厚さ: 13.4mm
ケース素材: ポリッシュ仕上げのサファイアクリスタル
文字盤: ポリッシュ仕上げの透明コンポジットレジン
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: 装飾付き透明ラバーストラップ、サファイアクリスタルとチタニウム製フォールディングバックル
ムーブメント情報
キャリバー: HUB9015
機能: 時・分、フライングトゥールビヨン
パワーリザーブ: 約150時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 25
価格 & 発売時期
価格: 4367万円(税込)
発売時期: ウブロブティックで販売
限定: あり、世界限定50本