ほとんどらんちゅうの仔引き経験がない 金魚一道 U による 冬眠明けから品評会エントリーまでの戦いの記録。
マーロン・ブランドのGMTマスターからフィリップ・デュフォーの最高傑作まで、最も重要な時計が(再び)オークションに出品されている。
過去40年にわたって築き上げられた世界最大級のシングルオーナー時計コレクションが、今年11月にオークションに出品される。
ここ数年、オークションに出品され大きな話題となった時計は、1978年に初めてロレックスのデイデイトを購入して以来、コレクションを続けているムハンマド・ザマン氏のコレクションに行き着く可能性が高い。
ザマン氏のコレクションには、私たちが最近市場で目にした最も重要な時計のいくつかが含まれている。たとえば、クリスティーズが予告している4つのハイライトのうち、すべてが過去4年間にフィリップスで売却されたものだ。コレクションを売却するメガコレクターはザマン氏だけではない。OAKコレクションのオーナーであるパトリック・ゲトライデ氏(彼のTalking Watchesについてはこちらをご覧ください)もまた、11月にクリスティーズ香港で600本以上のコレクションから142本をオークションにかける予定だ(彼の話はまた別の日にしよう)。
christie's passion of time sale november 2023
ダニエルズ・アニバーサリー “No.00”とロレックススーパーコピーn級品6062 “ステッリーネ”は、いずれも11月のクリスティーズのPassion for Timeオークションで販売予定。
メガコレクターのふたりがオークションにコレクションを出品することについて、何かあるとしても、それをどう評価すべきかは難しい。時期が来たというだけかもしれない。ザマン氏とゲトライデ氏はともに高齢で、過去数十年にわたってコレクションを築いてきた。皮肉なことに、彼らは今が売りどきだと感じているのかもしれない。ここ数年、市場は著しく減速しており、これ以上良くなる兆しはないからだ。
「(ザマン氏は)“ひとつの章の終わり”だと言っていました」とクリスティーズのヨーロッパ時計部門責任者であるレミ・ギルマン氏は言う。「彼の夢は当初からシングルオーナーオークションを開催することでしたから、彼が築き上げたコレクションでそれを実現できたことは大きな成果です」。ギルマン氏によれば、クリスティーズがザマン氏のコレクションの委託を勝ち取ることができたのは、シングルオーナーオークションに力を入れていることも一因だという。春にクリスティーズはF.P.ジュルヌ(そのほとんどがウォッチボックスからの委託販売)専門のセールを開催し、昨秋にはフェラーリの元ボス、ジャン・トッド氏の時計コレクションがクリスティーズに3180万スイスフラン(日本円で約52億6015万円)という結果をもたらした。
また、市場がこれらの時計をどのように評価するかも難しい。これらの時計の多くは、過去数年間、しばしば記録的な価格で競売にかけられ入手されたものだからだ。マーロン・ブランドのロレックス GMTマスターを購入することは最初のうちはクールなものだが、そのストーリーが最終的な買い手から離れるにつれて、その出所の価値も薄れていくのだろうか? さらに短期間に多くのビッグコレクションや重要な時計がオークションに出品されるため、市場が手に負えなくなる可能性もある。
さらに、収集の上層は風通しが悪い。たとえば、昨年11月の大手(オークション)ハウスのトップロットのほとんどは3人の入札者が競り合っていた。いまや、世界最大のコレクターのひとりは買い手ではなく売り手である。それだけでもハイエンドのマーケットに影響を与えるかもしれない。
「これらの時計の多くは、すでにオークションで素晴らしい実績を持っています」と話すギルマン氏。「どちらかというと、それらの時計は今日において、人々が慣れ親しんだもの、実績のある絵画のようなものです。市場に安心感を与え、人々によってすでに吟味され、落札されたというさらなる安心感を持って入札することができるのです」。各主役級の個体について、クリスティーズはその出品に強気の見積もり価格をつけているが、これはオークションハウスがどのように委託品を確保したかを示唆しているようでもある。
昨年11月、トッド氏のコレクションが落札されたことで、クリスティーズはジュネーブシーズンの総売上高でフィリップスを上回った(前者の5550万スイスフランに対して後者は4500万スイスフラン)。ザマン氏のコレクションがクリスティーズの典型的なレアウォッチオークションの傍らに出品されたことで、オークションハウスは今年もトップの座を射止めることができそうだ。
これらのコレクションがオークションに出品される理由が何であれ、それはエキサイティングな見ものとなるだろう。これらの時計のいくつかが売りに出されたとき、私はそれらが1世代にわたってプライベートコレクションに隠されてしまうのではないかと思ったが、そうではなく、私たちはそれらを再び、場合によっては最後に登場してからわずか1、2年後に見ることができるのだ。クリスティーズのギルマン氏によれば、ハイライト以外にも特別なカンジャール文字盤(ザマン氏はオマーン人だ)、多くの独立系ブランド、特別な複雑パテックなどがライブオークションと別のオンラインセールで販売される予定だという。つまりは何でもありということだ。ザマン氏のコレクションのハイライトをいくつか紹介しよう。
マーロン・ブランドのロレックス GMTマスター 1675
marlon brando rolex gmt-master
マーロン・ブランドのロレックス GMTマスターが2019年にフィリップスで195万ドル(当時の相場で約2億1000万円)で落札されたとき、私たちは楽しく取材した。ジェームズはHands-On記事で『地獄の黙示録(原題:Apocalypse Now)』の名言を大量に引用したが、まさに“誰もが欲しいものはすべて手に入れる”ということで、この時計は今年11月に再びオークションに出品されることになった。
簡単に復習しておこう。これは1970年の映画に登場したGMTマスターで、ブランドは彼の役柄に合うようにベゼルを外した。彼はまた、ケースバックに自分の名前を手作業で刻印したのだ。2019年にオークションに出品され、ザマン氏の手に渡るまで、この時計はブランド家の手元にあった。
私は2019年の入札の様子を覚えている。それは信じられないほど遅く、日本からのオンライン入札者が入札を打ち切ったとき、そのロットの落札に20分ほどかかったのだ。その入札の遅さが、今回のブランドのGMTマスターに対する関心の表れなのかどうかは誰にもわからない。この時計がどこで落札されるにせよ、信じられないほどクールな時計であり、歴史に残る偉大なミッシングウォッチのひとつであることは間違いない。
推定落札価格 100万~200万スイスフラン(日本円で約1億6545万円〜約3億3085万円)
フィリップ・デュフォー グラン&プチソヌリ No.1
dufour grand and petite sonnerie
2021年、フィリップ・デュフォーのグラン・プチ・ソヌリ No.1を取り上げたが、この時計は最終的にフィリップスで470万スイスフラン(日本円で約7億7745万円)で落札された。デュフォー氏はこの時計を8本しか製造しておらず、A Collected Manはフィリップスのオークションの数カ月前に1本を760万ドル(日本円で約11億3670万円)で落札したばかりだった。
フィリップスではザマン氏がバイヤーであったことが判明し、クリスティーズはグランド・プチ・ソヌリ No.1を再び販売することになった。この時計は現在、オークションで落札された独立系ウォッチで最も高価な時計の記録を持っており、2021年の市場最高値でその記録的な価格に並ぶのは難しいかもしれないが、現代の独立系ウォッチメイキングにおける最も重要なもののひとつであり、本当に特別な時計である。
推定落札価格 400万~600万スイスフラン(日本円で約6億6170万円〜約9億9250万円)
ジョージ・ダニエルズ アニバーサリー No.00 プラチナ
george daniels platinum anniversary 00
フィリップ・デュフォー氏と同列に語られる数少ない時計師のひとりがジョージ・ダニエルズであり、ジョージ・ダニエルズのアニバーサリーは、もともと彼がコーアクシャル脱進機を開発した記念に考案されたもので、彼の作品のなかでも最も希少なもののひとつである。これまでにわずか43本が製造され、プラチナ製は4本のみである。さらに素晴らしいことに、このモデルはムーブメントNo.00を搭載している。2019年に納品され、その後すぐに市場に出回り、A Collected Manが2021年に販売した。その1年後、オークションに現れ、フィリップスで239万ドル(日本円で約3億5745万円)で落札された。今シーズンのオークションでは、ダニエルズとロジャー・スミスクラスの重要な時計が数多く出品されているが(サザビーズがふたつほど出品しており、別の記事で紹介する)、アニバーサリー No.00はやはりハイライトのひとつとなるはずだ。
私はアニバーサリーが2022年の実績を上回る可能性は低いと考えている。先日、ロジャー・スミスのシリーズ2が出品されたことを紹介したが、こうしたハイエンドな独立系の多くが頭打ちになり、コレクターのあいだで論調が変わってきているようだ。たとえば、私が前述の記事で取り上げたシリーズ2オープンダイヤルは、当初110万ドル(日本円で約1億6455万円)という希望価格だったが、Wristcheckは9月22日まで不透明な“入札”プロセスを行い、よりよいオファーが得られるかどうか試していた。どうやら、それはうまくいかなかったようだ。スミスはまだ入手可能で、現在は100万ドル(日本円で約1億4960万円)の希望価格で売りに出されている。100万ドルは昔ほどではないが、それでも時計にとっては大金だ。さらに今オークションシーズンにはスミスとダニエルズの重要な時計がいくつか出品されるため、入札者の興味を複数のロットに分散させることができるかもしれない。
推定落札価格 120万~240万スイスフラン(日本円で約1億9850万円〜約3億9670万円)
ロレックス 6062 “ステッリーネ”
rolex 6062 stelline bethune
11月のオークションには、5本以上のロレックス 6062が出品される予定である。このリファレンスは私のお気に入りのロレックスリファレンスであるため、今後数週間にわたり、別の記事でこのリファレンスとそれぞれの作例を詳しく見ていくつもりだ。
最終的な考え:世代交代か、それともそれ以上の何かか?
ザマン氏やゲトライデ氏のようなコレクターがオークションにコレクションを出品することは、コレクションにおける世代交代の始まりのように感じられる。これらのコレクターは、彼らのディーラーやアドバイザーとともに、過去数十年にわたって腕時計コレクションというカテゴリーを定義してきた。この成長にはよい面も悪い面もあった。コレクターズアイテムは売買される資産となり、そのあいだに評価されることも多い。また、市場に出たばかりのオリジナルオーナーの腕時計が少なくなったため、すでに市場に知られている腕時計が再びオークションに出品されるようになったのだ。しかし新しい世代が時計収集に目覚めつつあり、初めてこれらの時計とその物語を知るかもしれない。
時計を取材していたはじめの頃から、IWCの素晴らしさに感心していたことのひとつが、そのちぐはぐなところだった。IWCはどのようにして信頼性の高い複雑機構を、名のある高級時計ブランドで見られる数分の一の価格で提供し続けることができたのだろうか? やがて私が知ることになるのは、古くから存在する複雑機構にまったく異なる方法で取り組む才能を持った時計職人や技術者が、IWCには少なくないということだった。。IWCが映画やスポーツとの結びつきを持つマーケティング大国になるずっと前から、IWCは価値志向の愛好家向けブランドだったのだ。パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンドクロノグラフ、さらにはグランドコンプリケーションまで、これらの複雑機構をすべて慎ましいバルジュー 7750をバックボーンに構築したのである。
当時のIWCを率いていたのはレジェンドともいえるギュンター・ブリュームライン(Günter Blümlein)で、彼は時計愛好家が当然伝説とみなす時計職人たちのリストを参考にした。当時のIWCの特許に付けられた名前(ルノー、パピ、クラウス、そしてハブリング)をざっと見て欲しい。外野にいた私には、伝統的なウォッチメイキングのなか、経済的で簡素な進歩を遂げようという気風が会社に焼き付いているように思えた。これについてはブリュームラインだけでなく、IWCのパーペチュアルカレンダーを開発したクルト・クラウス(Kurt Klaus)氏にも感謝したい。またIWCの卒業生であり、現在は妻のマリアとともにオーストリアで時計製造会社を経営するリチャード・ハブリング(Richard Habring)氏にも賞賛を贈りたい。IWCスーパーコピーn級品 代引きそんなリチャード・ハブリングが、今日のウォッチメイキングにもたらした最も重要な貢献である、IWC ドッペルクロノグラフについて掘り下げる。
スプリットセコンドクロノグラフとは何か?
スプリットセコンドクロノグラフは、一般的なクロノグラフにひとひねり加えたもので、それ自体が複雑なメカニズムを持つ。しかし通常のクロノグラフがひとつの物事を計時できるのに対し、スプリットセコンドクロノグラフは複数のイベント、または周回などその一部を、1度に計時することができる。iPhoneやデジタルクロノグラフウォッチの時代の今、これは非常にシンプルで簡単な操作に過ぎない。しかしそのような電子機器をもたらした技術の進歩以前は、そうではなかった。
ダブルクロノグラフ、ラトラパンテ、ドッペルクロノグラフなど、さまざまな名称で知られるこの機構は、1831年にヨーゼフ・タデウス・ヴィナール(Joseph-Thaddäus Winnerl)が初期の形として初めて導入(彼はのちの1838年に、ハートカムを備えたスプリットセコンド機構を開発している)。1923年までに、パテック フィリップは腕時計に収まるサイズのものをつくった。今日に至るまで、パテックはRef.5959で世界最小のラトラパンテクロノグラフを製造している(編集注記:2023年現在はすでに生産していない)。
オーソドックスなスプリットセコンドクロノグラフの一例である、パテック フィリップ Ref.5959。
スプリットセコンドクロノグラフは一般的に、従来のコラムホイール付きのクロノグラフをベースに機能する。ダイヤルを見ると、メインのクロノグラフ秒針とは別に独立して停止させることができる予備のクロノグラフ秒針がある。通常、専用のプッシャーを介してメインのクロノグラフ秒針に“追いつく”ことができる。これはすべて中央のクロノグラフホイールの真上に配置された追加のホイールからなる、繊細な機構によって実現している。追加のホイール、つまりスプリットセコンド用のホイールは、ふたつの爪のあいだに位置し、スプリットセコンドの外側と爪の内側に粗い面があることで、摩擦によって両表面間に迅速かつ確実な相互作用が生まれる(25セント硬貨をピンセットで摘み取っているところを想像して欲しい)。
スプリットセコンドクロノグラフムーブメントを、中央のスプリットセコンドホイールが挟み込んで停止させる。
ふたつのホイールは互いに連結しており、クロノグラフが作動すると同じ方向に回転する。クロノグラフが停止すると一緒に停止し、クロノグラフをリセットすると両方のホイールも一緒にリセットされる。ふたつのホイールが独立して動くのは、スプリットセコンドプッシャーが作動しているときだけで、この際、爪がスプリットセコンドホイールを掴んで停止させ、メインクロノグラフは回転を続ける。ハートカムとローラーで構成される機構は、スプリットセコンドホイールの一種の“メモリー”として機能し、ボタンを押すだけで中央のクロノグラフホイールに瞬時に追いつくことができるのだ。
IWCのダブルクロノグラフ
IWCのほかのハイコンプリケーションの多くがそうであるように、IWC ドッペルの天才的な点は、ウォッチメイキングの最も困難なメカニズムのひとつである基盤を容易に入手できる(むしろありふれたと言う人もいるかもしれない)ムーブメントにしたことである。バルジュー 7750は最初から機械加工や組み立てが容易で、部品の互換性もある程度しやすいものに設計されていた。ハブリングの発明は、この哲学をラトラパンテの機能にも適用したことだ。IWCのスプリットセコンドは、クロノグラフとラトラパンテの両方にカムシステムを採用した最初の製品である。また、ハブリングが設計したモジュールは、この堅牢なエボーシュムーブメントを使用しているため、手に入れやすいスプリットセコンドのなかで最も耐久性が高く、耐衝撃性に優れている。その点については後ほど説明するが、オリジナルが製造されてから25年以上が経過した現在、IWCのCal.79230の耐衝撃性は驚くほど高いことが証明されている。
IWCはこの複雑機構をセラミック、ゴールド、さらにはプラチナと、何度か繰り返し改良した。またポルトギーゼやインヂュニアといったさまざまなラインにも採用している。しかし今回紹介するモデルは、1992年初頭に発売されたオリジナルのステンレススティール製パイロットダブルクロノグラフ、Ref.3711だ。フリーガースタイルの、42mm径×17mm厚という大振りな時計で、磁場からムーブメントを保護するべくSS製のアウターケースに軟鉄製インナーケースを組み込んでいる。
IWCのダブルクロノグラフは、この時計が考案・製造された1990年代初頭だったからこそ可能だった。この時代、必要な部品はCNCで確実に加工できたのである。完全工業化された、あるいは“大量生産された”最初のスプリットセコンド式クロノグラフでもあった。従来、このような機構は丹念につなぎ合わせ、非常に細かい公差まで手作業で調整しなければならなかったが、IWCのものは堅牢であり、機械の助けを借りて製造することができた。しかもそれだけではない。従来のスプリットセコンドクロノグラフの場合、ボタンを押し間違えたらその機能が停止するが、IWCのダブルクロノグラフの場合、何も考えていない6歳児に渡したとしても、キャリバーに影響を与えることなくボタンを押すことができる。
一般的なスタート/ストップボタンとリセットボタンがリューズの横に並ぶ。
その反対側には、スプリット用のプッシャーがある。
ハブリングがバルジュー 7750ムーブメントに、スプリットセコンドモジュールを“改造”する際、直面した主な課題のひとつは、ひとつではなくふたつの中心軸をムーブメント全体に通すことであった。ハブリングによると、オリジナルの7750クロノグラフのセンターホイール軸の直径は0.5mmしかないが、このスペースをチューブと軸のために使わなければならなかった。このような薄いSSに穴をあけようとして失敗したあと、彼は昔の上司であるクルト・ケルバー(Kurt Kerber)に電話をし、医療用品店にある細い中空の皮下注射針を買ってプロトタイプを作ると提案をした。驚いたことに、それがうまくいったのだ。
初期のIWC ダブルクロノグラフ ムーブメントのプロトタイプ。Photo: Courtesy Richard Habring
パイロットの始祖
オリジナルのダブルクロノグラフは、IWCのスタンダードなフリーガークロノグラフのデザイン言語で提供されているほか、IWCの近代的なパイロットウォッチの全シリーズの源流となるほど、デザインの観点からも非常に重要な時計だ。もちろん針や文字盤、アラビア数字インデックスなどの全体的なデザインは、IWCが1948年に生産を開始したマークXIという、昔からあるポピュラーな時計から引用されている。
IWC Mark XI
IWC マークXI。
このダブルクロノグラフのムーブメントはパイロットのレンジで何度も発表されているが、ドーム型サファイアクリスタルとトリチウム文字盤を備えたRef.3711には特別な魅力がある。その多くは数十年のあいだに見事に変色している。
パイロットシリーズだけでも、IWCはハブリングのスプリットセコンド機構を大いに活用している。まず、この物語に登場するRef.3711だ。これは1992年に発売され、非常によく似たRef.3713に置き換えられたが、主な違いはドーム型からフラットなサファイアクリスタルへ移行したこと、トリチウムの針とインデックスがスーパールミノバに変更されたことである。これらの作品は、人気の高い46mmのトップ・ガンバージョン、Ref.3799、インヂュニアコレクションバージョン、そしてスピットファイアシリーズのほかのモデルの基礎を築いた。またスプリットセコンドを数多く揃えるIWCのもうひとつのシリーズがポルトギーゼである。1994年、リチャード・ハブリングは、スプリットセコンドをより洗練させたバージョンである、日付・曜日表示とアワーカウンターを省いた手巻きモデルのアイデアを思いついた。ハブリングはIWCのトップに、非常に初期のパテック フィリップのスプリットセコンドクロノグラフの写真を見せたところ、ポルトギーゼラトラパンテの垂直バイコンパックスレイアウトを承認するよう、ブリュームラインに説得することができたと言う。
IWCを知る限り、スプリットセコンドクロノグラフは同社の主要製品のひとつに含まれているが、最近IWCのウェブサイトを見ても、現在のコレクションにスプリットセコンドクロノグラフは含まれていないことがわかった。これにはショックを受けた。IWCの特許は2012年に切れたため、ハブリング自身を含むほかの時計メーカーも、このようなシンプルなスプリットセコンドを再び製造できるようになったのだ。私はIWCに連絡を取り、別のスプリットセコンドクロノグラフが再びラインナップに追加されるのではないか、またそれがいつになるのか、あるいは当面はほかの種類の時計に集中することにしたのかを明確にしてもらった。
コレクション性
オリジナルのRef.3711は、価格という点で非常に親しみやすく、オンライン上で時折、約5000ドル(日本円で約55万円)で見つけられる。IWCが現代で作った、最も重要な時計のひとつとしては悪くない価格だろう。ほかのブランドとの競合という点では、オリジナルのIWC ダブルクロノグラフ Ref.3711は、1992年の発売時にはいなかった。発売当時、スプリットセコンドとクロノグラフの両方にカムを使用した史上初のダブルクロノグラフとして確立していたのだ。ハブリングのデザインは、ウォッチメイキングの最も複雑な機構のひとつであるスプリットセコンドを、IWCならではのツールウォッチとして完成させたのである。
次回はバルジュー 7750と、ムーブメントにラトラパンテを組み込むことにハブリングがどのように取り組んだかを詳しくご紹介する。
時間をかければある程度コンスタントに見つけることもできるが、文字盤やケースが分厚いままの、素晴らしいオリジナルコンディションで見つかることはめったにない。我々の#roadtobaselの旅についてきてくれた方は、途中で何度か立ち寄ったのを見たことがあるだろう。そのうちのひとつがクリスティーズ・ジュネーブで、信じられないほどの数のヴィンテージロレックスウォッチを見ることだった。先日は白文字盤のエクスプローラーⅠを見てもらったが、スーパーコピー 代引き今日は我々が見てきたサブマリーナーのなかでも、特に素晴らしかったビッグ・クラウンを見ていただきたい。
これはリファレンス6538のサブマリーナーだ。多くのサブが、ディーラーやコレクターが“ジェームズ・ボンド”の称号を与えてきたが、唯一の本当のボンドサブは6538である。その巨大で特大なリューズがそうさせる(5510にもビッグクラウンの個体があるが、それはコネリーがつけていた時計ではない)。この特別な時計をより特別なものにしているのは、以下の3つの点にある。
まず、このモデルは4ラインだ。つまり、ごく簡単に言えば6時位置に4行のテキストがあるということだ。何とも思わないかもしれないが、ほとんどの6538には文字盤に“200m=660ft”と“SUBMARINER”の2行しか表記されていない。しかし、この例にはさらに“OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER”という2行が追加されている。しかし、この4行プリントをさらに興味深いものにしているのは、それのプリント方法にある。この行のなかでは、3つの異なるトーンとフォントがある。防水性の表示はシルバーでプリントされ、その下の“SUBMARINER”は12時位置の“ROLEX”とクラウンマークと同様にゴールドで記されているが、文字盤自体には印刷されていない! 文字盤の下にある飾り板に控えめな形で描かれているのだ。そして最後の2行の文字は文字盤にグレーがかった色調で薄く印刷されている。不思議だろう? コレクターにとってこの4行ダイヤルは大きな違いを生み出す。
それから実際の文字盤の色だ。この時計は1959年のもので、54年の歳月を経て、オリジナルの文字盤は驚くほど濃厚なチョコレートブラウンに変わった。“トロピカル”とも呼ばれるこれらの褪色した文字盤は、黒のままの文字盤よりも非常に高いプレミア価格で取引される。この特別な例は、均等かつ全面的に褪色しているという点で素晴らしい。とにかくゴージャスで、光の当たり方によってガラッと色が変わる。
この時計を特別なものにしている3つ目の特徴は、全体的なコンディションである。オリジナルのダイヤル(言うまでもなく)、オリジナルにマッチした針、赤い三角マークがついた本物のベゼル、本物のビッグ・クラウン、当時のブレスレットが特徴だ。その上ケースはとてつもなく分厚く、このような古い時計ではめったに見られない、パリッとした面取りが施されている。
信じられないほどの品質、珍しいトロピカルダイヤル、そして4ラインのクロノメーター表示の組み合わせにより、ジェームズ・ボンドサブを最高のモデルに押し上げた。クリスティーズの販売見積もり額は15万スイスフラン~25万スイスフラン(当時の相場で約1580万~2635万円)だ。この数字に問題はないと思われる。ヴィンテージサブマリーナーの愛好家にとってこれは最高のものであり、もしかしたらそれ以上のものかもしれない(編集注記:結果は51万9750スイスフラン、当時の相場で約5475万円にて落札)。